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がん化起こす活性酸素の検出に成功 東大と慶大が生きた動物で世界初

2015.10.27

 生きた動物の体内で活性酸素を検出することに、東京大学大学院薬学系研究科、同医学系研究科と慶應義塾大学医学部の共同研究グループが世界で初めて成功した。活性酸素は、がんや生活習慣病、老化に伴うさまざまな病気の原因であることが指摘されているが、これまでは、人間をはじめ生きた動物の体内で観察することが困難だった。活性酸素の生体内での役割解明や、活性酸素発生を抑える新薬の開発につながる成果として今後の研究の進展が注目される。

 多くの生物は、生命維持に必要なエネルギーを得るため、絶えず酸素を消費しており、これらの酸素の一部は、代謝の過程で活性酸素に変換される。活性酸素は、反応性が高い状態の酸素分子で酸化力が強く、化学反応を起こしやすい。細胞の膜を傷付け、傷が蓄積することにより動脈硬化などの生活習慣病の原因になるほか、遺伝子を傷付けて発がんや老化を促進する、とされる。しかし、無色透明で発生してもすぐに消えてしまうため、発生場所や量を知ることが難しかった。このため、活性酸素を生きた動物の体内で視覚的に観察、測定する手法の開発が求められていた。

 研究グループは、生体内物質を可視化する「蛍光プローブ」と呼ばれる蛍光色素が生体内の微量物質と相互作用すると蛍光の強さや色調が変化すること、さらに、蛍光プローブを生きた細胞内に入れると、見えなかった生体物質も顕微鏡で観察できることに着目。ホタルの発光酵素である「ルシフェラーゼ」を利用した独自の検出システムを開発し、生きた動物の体内で発生する微量の活性酸素を検出する手法に結び付けた。この手法により、生体を傷つけることなく活性物質を高感度で検出することができたと、いう。

 今回の成果は、新薬の開発のほか、活性酸素の発生を防ぐことをうたう健康食品の科学的な効能評価、さらにアンチエイジング(抗加齢)研究にもつながる、と期待される。

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