原子力施設の従業員が不正な意図をもって核燃料物質や核燃料物質防護情報に接近するのを防ぐ「個人の信頼性確認制度」について検討していた原子力規制委員会核セキュリティに関する検討会のワーキンググループが、制度の基本的方向を示す報告書をまとめた。
19日の核セキュリティに関する検討会に提出された報告書は、ウランやプルトニウムなど特定核燃料物質防護の第一義的責任は事業者が負うとして、事業者が実施すべき具体策を列挙、さらに基本的枠組みを原子力規制委員会規則で定めることを提言している。
報告書は、原子力発電事業者などが関連会社を含む従業員に対し、防護区域あるいは周辺防護区域に入る際と、特定核燃料物質の防護に関する情報を扱うことを許可する場合、対象者の申請に基づき、信頼性を確認することを求めている。具体的には、特定核燃料物質の盗取、妨害破壊行為を防止するために必要な範囲内で、氏名、住所、生年月日、学歴、職歴、賞罰歴のほか法律上の責任能力、テロ組織など暴力的破壊活動を行う恐れのある団体や暴力団との関連などについて自己申告するよう事業者が申請者に求める。自己申告が正しいことを裏付ける運転免許証や住民票などの提出に加え、特定の外国に繰り返し渡航している事実がないかを確認するためにパスポートを提出させることなども考えられるとしている。
さらに法的な責任能力や正常な判断能力を持つかどうかという観点から、後見開始の審判(精神上の障害によって判断能力を欠く人を保護する家庭裁判所の手続き)を受けていないことを裏付ける証明書類や、アルコールや薬物の影響に関する医師の証明を求めること、さらには適性検査を判断材料にすることも考えられる方策として挙げている。
事業者間の統一的な運用を図るため、取得した個人情報の厳重な管理や判断基準の詳細をガイドラインで定めることが適当とする一方、判断基準の詳細などについては、内部脅威者となろうとする者が意図を隠すために悪用する可能性を考え、非公表とするのが適当とした。
国際原子力機関(IAEA)は、2011年1月、個人のプライバシーに考慮しつつ、個人の信頼性判定が必要となる状況と、どのように実施するかを明確にするための個人の信頼性に関する方針を決定するよう加盟国に勧告、既に主要原子力利用国は制度を導入している。ワーキンググループは、国が確認すべき事項と判断基準を定め、防護区域などへの立ち入りや防護情報の取り扱いに制限をかけることを規則により制度化することで、IAEA勧告にも応え得るとしている。
関連リンク
- 原子力規制委員会「第5回核セキュリティに関する検討会」
- 核セキュリティに関する検討会 個人の信頼性確認制度に関するワーキンググループ報告書「個人の信頼性確認制度の方向性について」