世界的に貴重な海鳥のオガサワラヒメミズナギドリが世界自然遺産、小笠原諸島の東島の国有林に生き残っていることを、森林総合研究所(茨城県つくば市)の川上和人(かわかみ かずと)主任研究員らが小笠原自然文化研究所との共同研究で確認した。その営巣地も世界で初めて発見した。この鳥は過去に8回しか確実な記録がない非常に希少な種で、最も絶滅の危険性が高い絶滅危惧種ⅠA類に指定されている。生息地の保全強化と継続が必要だ。森林総合研究所が3月24日に発表した。
オガサワラヒメミズナギドリは体長25〜30㎝、翼を開いた長さが55〜60㎝、体重130〜150g。上面が黒色、下面が白くて目の上まで広がり、足が青いのが特徴。1963年と1990年代初めに米ミッドウェー諸島で1羽ずつ確認されたのを最後に途絶えていた。ミッドウェーで見つかった63年の標本を基に、米国の研究者が2011年に新種として記載した。
一方、小笠原諸島では、父島から1.5㎞東の無人島の東島などで過去20年間に、死骸も含め正体不明のミズナギドリ6羽が見つかっていた。研究グループがそのDNAを分析し、東に約4000㎞離れたミッドウェーの種と同種であることを2012年に突き止め、小笠原に生息する可能性が高いとみて、繁殖期と推定された冬に東島で野外調査をした。
東島は面積0.28平方キロの小島だが、ほかに4種の海鳥が営巣する有数の海鳥繁殖地。このミズナギドリは繁殖地で夜間、独特の甲高い鳴き声を上げる。その鳴き声を頼りに探した。2015年2月25日に、少なくとも10羽の鳴き声を確認した。タコノキの低木林に隣接したオガサワラススキの草地の地面に掘った穴の中に、卵がある巣を発見した。オガサワラヒメミズナギドリの営巣の発見は世界で初めてで、小笠原の自然の中にこの鳥が生き残っている確証になった。
4羽を捕獲して、形態を測定して足環を装着した後、すぐ放った。営巣地が見つかった国有林は、林野庁が森林生態系保護地域に指定して、固有森林生態系の修復を目的に外来植物の駆除事業を実施している。捕食者として大きな脅威となる外来ネズミも、環境省が2008〜10年に根絶した。こうした保全の活動が効いて、この幻の鳥が東島で生き残ることができたとみられる。
川上和人主任研究員は「今回見つかった個体数はごくわずかで、いまだに絶滅の危機にある。その生態や進化も興味深い。その解明の手がかりも今回得られた。外来生物の駆除を徹底して固有の環境を保全すれば、この鳥を絶滅の窮地から救える。生息地の保全を進め、立ち入りを厳しく制限して、ネズミなどの外来種の侵入を防ぐ必要がある。今後、見つかった営巣地をモニターして、生態や分布を詳しく解明し、地元の社会と協力しながら保全に貢献したい」と話している。
関連リンク
- 森林総合研究所 プレスリリース
- 小笠原自然文化研究所 ホームページ