米科学アカデミーは、2015年のJ・ローレンス・スミス・メダルを永原裕子(ながはら ひろこ)東京大学大学院理学系研究科教授(63)に授与すると発表した。この賞は、米国の医師で隕石収集家、鉱物学者、著名な化学者でもあったジョン・ローレンス・スミス(1818〜1883年)の業績を記念して1888年に創設された古い学術賞。宇宙固体物質などで卓越した研究業績を挙げた科学者に対し、ほぼ3年に1度授与してきた。これまでの受賞者は米国のノーベル化学賞受賞者のハロルド・ユーリー(1893〜1981年)ら25人だけで、日本人の受賞は永原教授が初めて。授賞式は4月26日、ワシントンDC で開かれる米科学アカデミー総会で開かれ、賞金5万ドル(約600万円)が贈られる。
授賞理由は「初期太陽系で起きた物質の蒸発や凝縮のプロセスを実験と理論計算で研究し、隕石や惑星の原物質の進化を解明したこと」。惑星や小惑星に見られる多様な物質を記載するだけにとどまらず、物質学的観察から、物理と化学を統合して、その形成プロセスを抽出する手法を開拓した。この研究は1980年ごろ、東京大学の大学院生のころから始め、一貫して原始惑星系円盤の物質進化に取り組み、世界の隕石研究を一新するような影響を与え続け、地球や太陽系誕生の理解を深めるのに貢献した。
永原裕子教授は1952年、東京生まれ。早稲田大学理工学研究科と東京大学理学系研究科の大学院、東京大学助教授などを経て、2001年から現職。優れた女性科学者に贈られる猿橋賞や、日本鉱物科学会賞などを受けている。永原教授は「大変栄誉ある賞をいただくことになり、光栄です。日本の宇宙物質科学研究や、特に自然科学を目指す若い女性たちの励みになれればと思います」と話している。
関連リンク
- 東京大学 プレスリリース
- 米科学アカデミー プレスリリース