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放射性セシウムは福島で黒雲母が固定

2014.11.12

 東京電力福島第1原発事故で放出された放射性セシウムによる土壌汚染は日本が抱える大問題のひとつだ。その放射性セシウムは福島県東部の阿武隈山地で、主に風化黒雲母(市場では「バーミキュライト」と呼ばれている)に存在することを、東京大学大学院理学系研究科の小暮敏博(こぐれ としひろ)准教授らが突き止めた。福島県の土壌の除染や貯蔵などの効率化につながる研究といえる。日本原子力研究開発機構、物質・材料研究機構、国際農林水産業研究センターとの共同研究で、11月10日付の米化学会誌Environmental Science & Technologyオンライン版に発表した。

 研究グループは、イメージングプレート(IP)オートラジオグラフィーと呼ばれる放射線検出の手法を改良して、阿武隈山地の福島県飯舘村から採取した土壌を微細に解析した。数十ミクロンメートルの土壌微粒子の中から、IPを感光させた放射性微粒子を特定し、放射性セシウムを固定している多くの微粒子の正体を初めて明らかにした。これらの微粒子を電子顕微鏡内に移動させ、その形態や化学組成を調べた。

 一連の解析で、放射性セシウムは風化黒雲母に多く固定され、この鉱物中に均一に存在していることを確かめた。室内実験でも、風化黒雲母はセシウムをよく吸着することが報告されており、その結果を裏付けた。阿武隈山地の地質は、主に恐竜が繁栄していた中生代に形成された花崗岩でできている。風化黒雲母は、花崗岩の長年の風化で形成された阿武隈山地の土壌に大量に含まれる。森林や水田などの土壌に含まれる放射性セシウムのかなりの量は、この風化黒雲母に固定されている可能性が高いことがわかった。

 小暮敏博准教授は「今回の結果は汚染土壌中の放射性セシウムの今後の動態予測や有効な除染方法の開発などに貢献するものといえる。福島県の他の地方の土壌でも、同様に放射性微粒子を特定して汚染対策に寄与したい」と話している。

福島県の放射能汚染土壌から採取された放射性微粒子(上)と、各粒子から発せられる放射線をイメージングプレートの放射線記録媒体によって記録したもの(下)。赤や緑が強い放射線を示し、放射能を持つ微粒子とそうでないものが判別できる。
写真1. 福島県の放射能汚染土壌から採取された放射性微粒子(上)と、各粒子から発せられる放射線をイメージングプレートの放射線記録媒体によって記録したもの(下)。赤や緑が強い放射線を示し、放射能を持つ微粒子とそうでないものが判別できる。
放射性微粒子の電子顕微鏡像(上)とそこから放出されるX線が示す微粒子の化学組成(下)。左から順に風化黒雲母の鉱物粒子、有機物が主体で小さな鉱物粒子を含む粒子、細かい鉱物粒子の集合体(土壌団粒)。どれも放射性セシウムを固定している実体は風化黒雲母とみられる。
写真2. 放射性微粒子の電子顕微鏡像(上)とそこから放出されるX線が示す微粒子の化学組成(下)。左から順に風化黒雲母の鉱物粒子、有機物が主体で小さな鉱物粒子を含む粒子、細かい鉱物粒子の集合体(土壌団粒)。どれも放射性セシウムを固定している実体は風化黒雲母とみられる。
(いずれも提供:東京大学)

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