硫酸性温泉に生息する紅藻 Galdieria sulphurariaが、特定の条件下で、希少金属のレアアースを効率よく回収することを、筑波大学生命環境系の蓑田歩(みのだ あゆみ)助教らが実証した。レアアースのリサイクルに役立つ可能性がある。産業技術総合研究所の宮下振一研究員、稲垣和三研究室長、大阪大学の山本高郁招へい教授、東京薬科大学の都筑幹夫教授との共同研究で、10月2日付のドイツ科学誌Applied Microbiology and Biotechnologyのオンライン版で発表した。
レアアースのリサイクルでは、大量の鉄や銅を含む酸性の廃液中に、ごく少量含まれるレアアースを高い効率で選択的に回収する技術が必要となる。今回、蓑田助教らは、高温・酸性条件に生息する硫酸性温泉紅藻Galdieria sulphurariaに着目し、5種類の培養条件で、レアアースをどれだけ吸収するかを調べた。
この紅藻は40℃、準嫌気従属栄養、pH1.0の条件下で、複数の金属を含む酸性溶液から、0.5〜5ppmの低濃度のレアアースだけを高効率、選択的に回収できることを見いだした。さらにその仕組みは、従来提案されている微生物の細胞表面による金属回収方法とは異なり、生物活性が必要なことを明らかにした。
蓑田歩さんは「この紅藻は草津などの硫酸性温泉にはありふれている。強酸性で温度が高く、金属が溶けやすい環境に生息しているので、レアアースを吸収するのではないかと思って調べた。複数の金属が存在する酸性の金属廃液から低濃度のレアアースを効率よく集めることができたのは初めてで、レアアース回収の新技術開発につながる一歩だ。レアアースを吸収して細胞内に蓄積する仕組みを詳しく解明して、条件の最適化を探りたい」としている。
関連リンク
- 筑波大学 プレスリリース
- 産業技術総合研究所 プレスリリース
- 科学技術振興機構 プレスリリース