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台風頻発と白化でサンゴ礁回復に遅れ

2014.09.29

 サンゴ礁の命運は地球環境の指標として重要である。世界的に貴重なサンゴ礁とされる沖縄県・石垣島白保(しらほ)海域のサンゴ群集が、1998 年の白化で減少した後、一度は回復したが、その後連続して襲った台風と2007 年の白化で再び減少し、回復が遅れていることを、琉球大学熱帯生物圏研究センターの波利井佐紀(はりい さき)准教授らが明らかにした。東京大学や国立環境研究所などとの共同研究で、8月発行のドイツ科学誌Marine Ecology Progress Seriesに発表した。

 地球温暖化が進み、夏に30℃を超える海水温の異常上昇が数日間以上続くと、サンゴが白化して死滅することが知られている。1998年に琉球列島も含め、世界的に大規模な白化が起こったが、その直前から現在までサンゴ群集がどう変化したかを長い年月、追跡した研究は少ない。

 研究グループは、石垣島白保海域のサンゴ群集の変化を1998〜2012年の15年間にわたって現地の分布調査と数年間の航空写真解析で長期的に研究した。白保のサンゴ群集でも1998年の白化による減少が確認されたが、2003年までに回復した。しかし、04〜07年にかけて連続して襲来した5つの強い台風とそれに伴う土砂流出、さらに07年夏の高水温による白化が追い打ちをかけ、08年まで減少し続けた。

 サンゴの種類は、枝状のコモンサンゴやミドリイシから、高水温や台風に強いといわれているハマサンゴやアオサンゴに変化していることもわかった。地球温暖化で水温上昇に加えて、大型台風が頻発する可能性も懸念されている。台風は波浪による物理的な損傷だけではなく、土砂流出を引き起こしてサンゴにダメージを与えるだけに、注意が必要という。

 波利井佐紀准教授は「白化と大型台風頻発は海水温上昇という共通原因が関わっている。地域的には大型台風が来ても、土砂が海に流出しないような対策が必要になる。例えば、農地の周りに根をよく張る植物を植える活動などがはじまっており、流出を抑制するのに有効だろう。サンゴの保全には地球規模と地域的な環境の両方を改善していくことが重要だ」と提言している。

白保サンゴ礁の枝状サンゴ(コモンサンゴ)の大群落。1998 年の白化により枝状サンゴは激減したが、2003 年までに一度は回復した=2000年
写真1. 白保サンゴ礁の枝状サンゴ(コモンサンゴ)の大群落。1998 年の白化により枝状サンゴは激減したが、2003 年までに一度は回復した=2000年(撮影:海洋プランニングの井手陽一さん、提供:東京大学)
死滅して海藻が覆った白保の枝状サンゴ。回復した枝状サンゴが大型台風で流出した土砂や白化によって多くが死滅した
写真2. 死滅して海藻が覆った白保の枝状サンゴ。回復した枝状サンゴが大型台風で流出した土砂や白化によって多くが死滅した=2007年(撮影:波利井佐紀・琉球大学准教授)

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