米国で最も権威がある医学賞のラスカー賞(基礎医学部門)の受賞者に、細胞内のタンパク質の品質管理の仕組みを発見した森和俊(もり かずとし)京都大学大学院理学研究科教授(56)が決まった。米国のラスカー財団が9月8日発表した。
森教授は、細胞内の小胞体と呼ばれる小器官で、タンパク質が折りたたまれて正しく機能するかを調べ、不良品を解消する「小胞体ストレス応答」を見つけた。その仕組みを解明し、細胞内で作られたタンパク質の異常を検知して修正する細胞の「品質管理」や小胞体の恒常性維持の実体を突き止めた。この小胞体ストレスは、がんや糖尿病など多くの病気に関わっていることがわかり、新薬開発の新しい手がかりにもなっている。
米カリフォルニア大サンフランシスコ校のピーター・ウォルター教授との共同受賞。授賞式は9月19日にニューヨークで行われる。森教授は岡山県倉敷市生まれ、1981年に京都大学薬学部を卒業し、岐阜薬科大学助手、米国テキサス大学博士研究員などを経て、2003年から京都大学教授。
ラスカー賞の日本人の受賞者は7人目。その受賞者から多くのノーベル賞受賞者が出ている。ノーベル医学生理学賞を受けた山中伸弥・京都大学教授と利根川進・米マサチューセッツ工科大学教授もラスカー賞の受賞者だった。
ラスカー賞に決まった森和俊教授は9月9日、京都大学で記者会見し、「私が25年前にテキサス大学で酵母を使って始めた地道な基礎研究に対して、米国医学会最高の賞が与えられたことをとてもうれしく、また誇りに思います。今後も、さらに小胞体ストレス応答の研究を高めるためにより一層努力して、いずれ人の役に立つ研究にも取り組みたい」と語った。
関連リンク
- ラスカー財団 プレスリリース
- 京都大学 プレスリリース