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小腸幹細胞の移植実験にマウスで成功

2014.08.18

 体外に取り出して培養した小腸上皮の幹細胞をマウス消化管(大腸)へ移植する実験に、東京医科歯科大学大学院消化管先端治療学の中村哲也教授らが初めて成功した。実験で、移植細胞が正常な上皮を再生する幹細胞として機能する一方、小腸の性質を維持することも確かめた。消化管の再生医療の基礎になる成果として注目される。東京医科歯科大学大学院消化器病態学分野の渡辺守教授、水谷知裕特任助教、福田将義医師らとの共同研究で、8月15日付の米科学誌Genes & Developmentに発表した。

 研究グループは2012年、大腸幹細胞移植にマウスで成功しており、今回の小腸幹細胞移植実験で研究を発展させた。まずマウスの小腸上皮細胞を体外で培養して増やした。それを、別のマウスの肛門近くに大腸上皮を欠損させたあとの傷に移植した。移植された小腸上皮の幹細胞が大腸の欠損部に接着し、新しい上皮を形成し始めた。2週間後には、移植細胞が複雑な構造を形成しながら、分裂、増殖を重ねていた。1〜4カ月後には、移植された小腸細胞は大腸の上皮に安定して組み込まれていた。

 この上皮細胞の移植片を詳しく調べたところ、大腸の上皮ではなく、小腸上皮に特有の絨毛(じゅうもう)構造があった。遺伝子の発現パターンも小腸と極めて似ていた。こうして、体外で培養した小腸上皮幹細胞は、周りが大腸の環境に長期間置かれても、小腸の細胞の性質を維持していることを突き止めた。

 中村哲也教授は「今回の研究で、小腸上皮幹細胞が個体内で上皮組織を再生できることを実証した。小腸上皮は障害を受けると深刻な病態になる。そうした場合に、小腸上皮幹細胞移植は将来の有力な治療法になるだろう。小腸上皮幹細胞が大腸に移植されても、小腸としての個性を維持しているのも興味深い。これは、それぞれの幹細胞の独自性を解明する手がかりになる」と研究の意義を指摘している。

形態が異なる小腸上皮と大腸上皮。絨毛と逆側にくぼんだ構造の最底部にそれぞれの幹細胞が存在して、日々はがれ落ちていく上皮組織を修復し補給している。
図1. 形態が異なる小腸上皮と大腸上皮。絨毛と逆側にくぼんだ構造の最底部にそれぞれの幹細胞が存在して、日々はがれ落ちていく上皮組織を修復し補給している。

 

研究の概要とまとめ
図2. 研究の概要とまとめ
(いずれも提供:東京医科歯科大学)

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