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北極圏で恐竜の子連れ越冬の跡を発見

2014.08.11

 極域(北極圏と南極圏)で最も大きな恐竜の足跡化石産地を、北海道大学総合博物館の小林快次(こばやし よしつぐ)准教授とアントニー・フィオリロ招聘教員、米カンザス大学のステフェン・ハシオタス教授らがアラスカ州デナリ国立公園で発見した。大型植物食恐竜のハドロサウルス科の足跡化石で、子連れの集団で生活していたことを解明し、恐竜が北極圏で越冬していたことも初めて示した。恐竜研究で重要な発見といえる。8月1日付の米地質学会誌ジオロジーに発表した。

 恐竜が最も栄えた中生代末の白亜紀後期には、多くの恐竜化石がアジア大陸と北米大陸で見つかっており、当時陸続きだったベーリング陸橋を渡って行き来していたことは推定されていた。しかし、恐竜が北極圏でどのような生活をしていたかは謎だった。

 アラスカ州デナリ国立公園(図1)に露出している6900万〜7100万年前(白亜紀後期)の地層で2005年に恐竜の足跡化石が初めて見つかった。研究グループは07年から米国国立公園局の支援を受けて、日米共同調査を実施し、その初年度に大きな恐竜足跡化石産地を発見した。幅50m、長さ100mにわたり、数千もの恐竜の足跡化石が保存されていた。形状からハドロサウルス科とわかり、半分くらいには皮膚痕も残っていた。

 足跡化石の大きさは約80㎝から約10㎝まで混在しており、異なる成長段階のハドロサウルス科が集団生活していたことがわかった。足跡が小さい子ども(体長1〜2m)は13%、おとな(体長4〜8m)が84%、中間段階の亜成体は3%という構成だった。研究グループは「ハドロサウルス科は大きさの違う数世代の個体が集まって行動し、子どもが卵からかえった後も、集団で子育てをしていた。亜成体が少ないのは成長が速かったためだろう」と推定した。

 また、恐竜が小さな子どもを多数連れて、夏と冬、南北に数千キロもの長旅をするのは難しいため、ハドロサウルス科の恐竜は南下せずに冬も北極圏で過ごしていた可能性が強まった。白亜紀後期のアラスカは今より暖かく、年平気気温は10〜12℃だが、真冬の月平均気温は2〜4度と考えられており、日照時間が限られる中で、雪も降って、食料となる植物も少なく、過酷な生活環境だった。

 小林快次准教授は「恐竜の多数の足跡化石の保存状態がよく、当時の生活まで解析できた。恐竜が北極圏に越冬していたことを示す驚くべき証拠だ。恐竜が変温動物か恒温動物か、議論されているが、厳しい冬を越冬していたことを考えると、体温を保つ機能を持っていた可能性がある。現在も日米共同調査を続けており、白亜紀後期の北極圏の生態系を復元したい」と話している。

アラスカ州とデナリ国立公園の位置
図1. アラスカ州とデナリ国立公園の位置
デナリ国立公園の恐竜足跡化石産地
図2. デナリ国立公園の恐竜足跡化石産地
今回発見されたハドロサウルス科の足跡化石。A:成体の足跡 B:亜成体の足跡 C:幼体の足跡 D:皮膚痕
図3. 今回発見されたハドロサウルス科の足跡化石。A:成体の足跡 B:亜成体の足跡 C:幼体の足跡 D:皮膚痕
(いずれも提供:北海道大学)

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