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可視光でアンモニア人工光合成に成功

2014.07.31

 空気中の窒素を固定して、アンモニアを可視光で合成する新しい人工光合成に、北海道大学電子科学研究所の三澤弘明教授と上野貢生(こうせい)准教授、押切友也助教らの研究グループが成功した。可視光を含む幅広い波長域の光エネルギーを電気エネルギーに変換できる酸化物半導体基板に金ナノ微粒子を配置した光電極で、この新しい人工光合成を実現した。

 アンモニアは水素よりエネルギー密度が高く、将来のエネルギーキャリアとして注目されており、アンモニアの人工光合成には大きな可能性がある。7月 17 日付のドイツ化学会誌Angewandte Chemie International Edition のオンライン版に発表した。同じ研究グループは金微粒子などで水の光分解、水素と酸素の発生にも成功し、7月2日付の同誌に発表した。いずれも、可視光による人工光合成に道を開く重要な成果として注目されている。

 半導体の光触媒として現在広く使われている酸化チタンは、太陽光の中に5%程度含まれる紫外線しか利用できない弱点がある。北大の三澤弘明教授らは、光と金属表面の自由電子の集団運動が共鳴するプラズモン共鳴現象が起きる金微粒子に着目して、化学反応の触媒としての活用を研究してきた。

 酸化物半導体のチタン酸ストロンチウムの単結晶基板上に、光を捉えるアンテナ構造として髪の毛の太さの 1000 分の1程度のサイズの金のナノ微粒子(平均粒径50nm 程度)を高密度に配置し、その背面に窒素をアンモニアへ変換する助触媒としてルテニウムの微粒子を配置した電極を作った。金ナノ微粒子側(陽極)がアルカリ性水溶液の酸化槽に、ルテニウム側(負極)が酸性窒素ガスを封入した還元槽に接するようにして可視光を照射すると、アンモニアが合成された。

 この合成反応のみかけの量子収率(入射した光子が反応に使われた電子に変換された比率)はプラズモン共鳴スペクトルとよく一致した。このことから、金ナノ微粒子のプラズモン共鳴による電荷の分離がアンモニア合成につながっていることがわかった。研究グループは、光アンテナで効率的に集められた光子で、金の電子が高いエネルギーレベルまで励起されて、チタン酸ストロンチウム、ルテニウムへの電子移動と、ルテニウム表面上での窒素の還元によるアンモニアの合成を誘起するとみている。

 三澤弘明教授らは「特筆すべき点は、太陽光に豊富に含まれる 波長600nm近傍をピークとした可視光でアンモニア合成に成功していることだ。まだ収量は非常に少ないが、原理的に実証した意義が大きい。工夫すれば、太陽光に含まれるエネルギーを余すことなく化学エネルギーに変換可能な人工光合成の実用化への展開が期待できる」と指摘している。

図. 光照射に基づいて金ナノ微粒子構造から基板のチタン酸ストロンチウム、ルテニウムへの電子移動と窒素の還元に基づいてアンモニアが発生する様子を記した模式図
グラフ. アンモニア合成の量子収率(棒グラフ)とプラズモン共鳴効率(青線)の波長依存性
(いずれも提供:北海道大学)

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