ニュース

水道の漏水検知に学習型異音解析技術

2014.06.26

 漏水が疑われる水道管の箇所を学習型異音解析で絞り込む新技術を共同で開発した、と産業技術総合研究所スマートシステム研究グループの村川正宏グループ長らと日本ウォーターソリューション(埼玉県和光市、深澤純一社長)が6月25日発表した。熟練工による検査箇所を約5分の1に減らせることを実地試験で確認しており、漏水の検知や対策に役立ちそうだ。この技術によるセンサー装置の製品化を2015年にも予定している。

 日本の水道管の距離は、地球と月の間の1.6倍を超える61万kmにも達し、高度成長期に敷設された大量の水道管が今後一斉に法定耐用年数の40年を超え、更新時期を迎える。漏水検知を軸とする日常的な管理、補修がますます重要になっている。また、東南アジア諸国でも水道は急速に普及しているが、漏水率が非常に高く、安全な水の供給のためにも、漏水対策の効率化が求められている。

 共同研究グループは2013年から、水道メーターに付ける音響式の漏水検査器の一次調査で漏水が疑われた箇所に対して、異音解析技術で漏水か、漏水でないかを判別する方法を開発した。今回使った異音解析技術では、コンピューターに熟練工の判断事例を入力しておき、異常音を検知するための最適の方法を学習させる方式を取り入れた。これで想定外の異常音にもかなり対応できる。異常音を解析する算出法も工夫し、コンピューターが学習しやすくした。

 2つの地方都市の7万7789戸を調査したデータを用いて、異音解析技術の検証を実施した。漏水検査器で漏水が疑われる戸数として7081件を抽出した。2次調査として熟練工が訪ね、音聴棒で漏水音の検査を行ったところ、一次調査と異なって音が聞こえなかった件数が4663件、音が聞こえた件数が2418件であった。この2418件の中から無作為抽出で198件を選び、実験の対象としたところ、28件で真の漏水が確認された。

 これに対して今回の解析技術では、198件のうち、160件を漏水でないと判定し、38件が漏水であると判定した。結果的に、一次調査で疑わしかった198件中160件を二次調査の対象から除外でき、熟練工の手間を約5分の1(=38/198)に減らせたことになる。漏水でないと判定した160件のうち、実際は5件で漏水が起きていた。これは誤判定となるが、その漏水音は小さく、漏れの初期状況と考えられ、熟練工でも見逃すようなレベルだった。

 村川正宏グループ長は「検査箇所の絞り込みは検査コストを大幅に削減するため、人口減などで水道料収入が減少して、維持管理費の低減が求められている地方自治体の支援につながる。また、現在も漏水率が30 %を超えている東南アジア諸国で、安全な飲料水の供給に貢献することも期待できる。異音解析技術を改善し、誤判定も減らして製品化し、東南アジアにも展開したい」と話している。

学習型異音解析技術による漏水検知の位置づけ
図1. 学習型異音解析技術による漏水検知の位置づけ
実地の検証実験の結果
図2. 実地の検証実験の結果
(いずれも提供:産業技術総合研究所)

ページトップへ