ニュース

「京」が大規模グラフ解析で世界1位

2014.06.24

 大規模グラフ解析(互いに関連性のある複雑なデータの分析)に関するスーパーコンピューターの国際的な性能ランキングのGraph500で、「京(けい)」(神戸市)の解析結果が1位を獲得したと、理化学研究所(理研)が6月24日明らかにした。

ドイツのライプチヒで開催中の「HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング:高性能計算技術)に関する国際会議(ISC2014)」で公表された。前回(2013年11月)のGraph500のランキングの4位から、「京」は大きく飛躍した。東京工業大学大学院生(理研研修生)の上野晃司さんと理研、アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・ダブリンの共同解析の成果である。

 大規模グラフ解析の性能は、大規模かつ複雑なデータ処理が求められるビッグデータの解析で重要となる。「今回の結果は、『京』がビッグデータ解析に関しても高い能力を有することを実証した」と、「京」を運用する理研計算科学研究機構は指摘している。

 実社会における複雑な現象の分析では、多くの場合、分析対象は大規模なグラフ(節と枝によるデータ間の関連性を示したもの)として表現され、コンピューターによる高速な解析が必要となっている。社会的課題に限らず、神経機能やタンパク質の相互作用などの分野でもグラフ解析の範囲が広がっている。こうしたグラフ解析の性能を競うのがGraph500で、2010年から開始された比較的新しいスパコンランキングある。

 連立1次方程式の計算速度を競う旧来の世界ランキングのTOP500では、中国の国防科学技術大学が開発した「天河2号」が3連覇を達成した。「京」は2011年(6月、11月)に1位、その後、2013年(6月、11月)は4位となり、今回も4位を維持した。一方、Graph500では、複雑な計算を行う速度で評価されており、アルゴリズムやプログラムを含めた総合的な能力が求められるという。
今回Graph500の測定に使われたのは、「京」が持つ8万8128台のノードのうち6万5536台で、研究グループが約1兆頂点、16兆枝から成る大規模グラフに対する幅優先探索問題を0.98秒で解くことに成功した。ベンチマークのスコアは17977GTEPS(ギガテップス)だった。

 理研計算科学研究機構は「Graph500の1位獲得は幅広い分野のアプリケーションに対応できる『京』の汎用性の高さと同時に、高いハードウェアの性能を最大限に活用できる研究チームの高度なソフトウェア技術を示した。大規模グラフ解析では、アルゴリズムやプログラムの開発や実装で、今回のように性能が飛躍的に向上する可能性がある」とみている。

表. スパコンの国際会議で公表されたGraph500上位10位
表. スパコンの国際会議で公表されたGraph500上位10位

関連記事

ページトップへ