榊原定征(さかきばら さだゆき)東レ会長(71)が5月26日、日本化学会(会員約3万人)の会長に就任した。日本化学会会館(東京・神田駿河台)での就任会見で榊原新会長は「化学は企業を、大きくは産業・社会を本質的に変える力がある」と日本の再興、国際競争力への貢献を強調し、日本化学会のグローバル化とイノベーションによる「世界トップを目指す」こと、出口指向・課題解決型の産学連携の推進を掲げた。
榊原新会長は日本経済団体連合会の会長にもなる。経団連会長と化学会会長の兼務は初代経団連会長だった石川一郎(1885〜1970年)以来65年ぶり2人目。榊原新会長は「日本の化学力の向上と産業力の向上を一体ととらえることで、いろいろな相互作用が期待できる。日本経団連会長として各国の政府関係者に会うときにも、化学をPRして、学術交流を進めていきたい。化学会のプレゼンスを向上させ、研究成果の事業化などで産学連携を推進する」と兼務の意義を語った。
日本化学会長の任期は2年。大学などの学界出身者が2人続けた後、産業界の出身者が会長を務めることがほぼ踏襲されてきており、榊原氏は昨年4月の選挙で次期会長に選ばれていた。今年1月の日本経団連会長の内定より早かったため、異例の兼務となった。榊原氏も「経団連の会長を当初固辞した主な理由は日本化学会の会長に決まっていたからだ」と明かした。日本化学会は筆頭副会長の中條善樹(ちゅうじょう よしき)京都大学教授らがバックアップする体制を取り、榊原新会長に負担をかけないようにする。
榊原氏は名古屋大学大学院工学研究科修士課程(応用化学)を修了して東洋レーヨン(現東レ)に入社し、中央研究所、経営企画室長などを経て、2002〜10年に社長。政府の総合科学技術会議議員なども歴任し、現在は内閣府の産業競争力会議議員として科学技術イノベーション政策の主査を務めており、科学政策にも詳しい。
写真. 就任会見をする榊原定征・日本化学会会長=5月26日、日本化学会会館 |
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- 日本化学会 プレスリリース