高齢者の円滑な外出手段となりうる2人乗りの超小型電気自動車の公道走行認定を、「東京大学・柏市超小型モビリティ協議会」(会長・鎌田実東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)が4月に国土交通省から受けた。市販の「原付ミニカー」の車両(トヨタ車体の「コムス」)を大学が改造して公道走行認定を受けた例は日本で初めてという。超高齢社会を迎え、高齢者が使いやすい移動手段の開発は重要である。その一歩といえる。
超小型電気自動車などの新しい移動手段は、小型・軽量で安全性の高いことが要求され、家庭で充電できる利点がある。第一種原動機付自転車の「原付ミニカー」が市販車として存在するが、1人乗りに限られ、家族の送迎や夫婦の外出などができず、自動車のような実用性に欠ける。
「東京大学・柏市超小型モビリティ協議会」は国土交通省の超小型モビリティ認定制度に沿って申請し、2人乗りの超小型電気自動車の公道走行認定を国土交通省から受けた。東大大学院新領域創成科学研究科の鎌田・小竹(しの)・二瓶(にへい)研究室、千葉県柏市、東大の「明るい低炭素社会の実現に向けた都市変革プログラム」(代表・飛原英治新領域創成科学研究科教授)との共同作業の成果で、今後、試験を重ねて利便性や安全性などを調査検討する。
公道走行認定を受けた超小型電気自動車は2台で、長さ2.5m、幅 0.95m、高さ1.65m、重さ350kg。市販の電気式原付ミニカーに後部座席を増設し、前後2人乗りにした。車体の幅が狭く、狭小な駐車場所や道路で使いやすい。最高時速は50kmほど。家庭での8時間の満充電で30〜40km走れる。超小型電気自動車は1人乗りも含め、軽トラックが入れないような畑のあぜ道や山林内の利用にも向いており、高齢化が進む農林業の支援策になるという。
同協議会はこれまで、超小型電気自動車が省資源、CO2削減に加え、高齢者の外出促進に有効として、原付ミニカーをさまざまに改造してきた。送迎機能を持つ前後2人乗り方式がまず有望として、公道走行認定のほか、軽自動車検査協会で軽自動車としての認定を受け、ナンバープレートを付けた。2台のうち1台は、東大柏キャンパスでの展示、試走などの試験に使う。もう1台は本年度、地域の自治会に依頼して、住民の買い物や駅への送迎などで使い勝手を評価してもらう。
研究に取り組む東大大学院新領域創成科学研究科の久保登特任研究員は「自動車メーカーも前後2人乗りの電気自動車の開発に乗り出しているが、大学としては、高齢者用や農作業向け、後部に幼児2人を乗せる母子型など、超小型電気自動車の特に郊外地域での多様な用途を探りたい。公道を走れるのは千葉県柏市に限られるが、軽自動車として住民に日常的に使ってもらって試験する意義は大きい。4輪車なので、バイクの2人乗りよりはるかに安定している」と話している。
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- 東京大学 プレスリリース