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砂からケイ素産業基幹原料を直接合成

2014.05.22

 ケイ素は現代産業の鍵を握る元素のひとつである。そのケイ素化学産業の基幹原料を砂の主成分のシリカから効率的に直接合成する方法を、産業技術総合研究所(産総研)が開発した。ケイ素化学産業の基幹原料のテトラアルコキシシランを、シリカとアルコールの反応によって合成する新技術で、産総研触媒化学融合研究センター触媒固定化設計チームの深谷訓久研究チーム付、崔準哲主任研究員、安田弘之研究チーム長、佐藤一彦研究センター長らが成し遂げた。

 テトラアルコキシシランは、幅広い産業分野で使われているケイ素材料の基幹原料と、位置づけられる。工業的には、高温で炭素と反応させて還元した金属ケイ素にアルコールを反応させたりして合成しているが、典型的なエネルギー多消費プロセスのため、ケイ素原料のコストを上げる要因になっている。

 研究グループは、金属ケイ素を経由しない製造法として、シリカとアルコールを直接反応させる方法に着目した。この基幹原料のテトラアルコキシシランは、化学式で見ると、シリカとアルコールとの反応で生成し、その際に水ができる。しかし、逆反応の方がはるかに進行しやすいため、この反応で効率よく合成するのは難しい。そこで、生成する余分な水を取り除いてやれば、逆反応が抑えられるとみて、水を除去する有機脱水剤を加えたところ、テトラアルコキシシランが一段階で得られることを突き止めた。

 シリカとメタノールの反応に、脱水剤としてアセトンジメチルアセタールという有機物を加えると、反応温度242℃、反応時間24時間で、テトラアルコキシシランの収率は18%だった。さらに、この反応系に二酸化炭素と、金属アルコキシドとアルカリ金属水酸化物の触媒を共存させたところ、反応の効率が飛躍的に上がった。反応を96時間まで継続すると、収率は88%まで達した。

 この新技術は、砂から有機ケイ素原料の省エネルギー・低コスト製造に新しい道を開く可能性をはらんでおり、ケイ素化学産業へのインパクトは大きい。特許も出願した。5月22、23日に東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開かれた第3回新化学技術推進協会(JACI)/GSCシンポジウムで発表した。

 研究グループの安田弘之研究チーム長は「シリカやアルコールという安価でありふれた原料から、ケイ素化学産業の基幹原料を効率よく合成できる可能性が大きく開けた。コストの評価はこれからだが、触媒を改良して、大規模化も検討し、数年後の実用化を目指したい」と話している。

砂からの有機ケイ素原料の製造とその多様な製品群
図1. 砂からの有機ケイ素原料の製造とその多様な製品群
シリカとアルコールを反応させたときの化学式と今回開発した合成技術
図2. シリカとアルコールを反応させたときの化学式と今回開発した合成技術
シリカとメタノールの反応に有機脱水剤などを添加した場合の収率の比較
図3. シリカとメタノールの反応に有機脱水剤などを添加した場合の収率の比較
(いずれも提供:産業技術総合研究所)

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