勤務医の過酷な長時間労働は改善が遅れている。日本の脳卒中専門医の 4 割が長時間労働や睡眠・休日の不足で燃え尽き症候群に陥っている危うい状況を、九州大学大学院医学研究院の飯原弘二教授(脳神経外科)と国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部の西村邦宏室長らが調査で明らかにした。「医師の労働条件改善は急務」といえる。5月13日付の米医学誌『Circulation:Cardiovascular Quality and Outcomes』に発表した。
医師が突然やめていく。こうした「立ち去り型サボタージュ」が指摘されだして10年近くたった。背景に医師の疲労や燃え尽き症候群があり、医療事故の誘因として社会問題にもなっているが、日本では全国規模の調査がこれまで少なかった。
研究グループは全国の脳卒中治療に携わる脳外科と脳神経内科の専門医2564人に対し、燃え尽き症候群の客観的指標であるMBIスコアで判定した。41.1%が燃え尽き症候群に該当し、その半分は重症だった。一般市民の燃え尽き症候群が2割前後とされているのと比べると、2倍に上っていた。
長時間労働との関連を調べると、週当たりの労働時間が長い医師ほど、燃え尽き症候群が多かった。労働時間が週10時間増えるにつれて、平均12%ずつ燃え尽き症候群が増加していた。逆に毎日の平均睡眠時間が7〜8時間まで1時間増えるごとに、燃え尽き症候群は平均20%ずつ減少していた。休日と経験年数の増加が燃え尽き症候群の減少と関連し、生活の質(QOL)低下や時間外呼び出し、担当する患者数の増加が危険因子となっていた。
脳卒中専門医が多くいて、診療報酬で超急性期脳卒中加算を得ている病院の医師は、燃え尽き症候群の割合が専門医全体の半分になっていた。研究グループは「睡眠時間や休日の増加、労働時間の短縮が、脳卒中専門医の燃え尽き症候群を減らし、医師不足の解消にもつながる」と指摘している。
関連リンク
- 九州大学 プレスリリース
- 国立循環器病研究センター プレスリリース