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「ゆっくりかんで食べよ」根拠を実証

2014.05.12

 食事は「ゆっくりよくかんで」と教えられる。その根拠が実証された。急いで食べる時に比べ、ゆっくり食べる方が食後のエネルギー消費量が大幅に増加することを、東京工業大学大学院社会理工学研究科の林直亨(はやし なおゆき)教授と大学院生の濱田有香(はまだ ゆか)さんらが明らかにした。消化管の血流もゆっくり食べた時の方が増えていた。ゆっくりよくかむのは良い食習慣であることを裏付ける成果で、そしゃくを基本にした減量法の可能性も示した。欧州の肥満学会誌オベシティ5月号に発表した。

 早食いの人は太り気味になる傾向はこれまで、多くの研究で報告されている。しかし、早食いは食べ過ぎにつながる可能性もあり、同じ量の食事で食べる速さが体形にどう影響する、はっきりしていなかった。研究グループは、食事でかむ速度と食後のエネルギー消費量(食事誘発性体熱産生)の関連を調べた。

 男性10人(平均25歳)に20分間の安静後、ブロック状の食品(カロリーメイト3本、300キロカロリー)を食べさせた。それぞれ、できるだけの早食いと遅食いを試行した。平均して、早食いは103秒で137回かみ、遅食いは497秒かかり、702回かんだ。食後90分間の酸素摂取量を計算し、体重当たりのエネルギー消費量を算出した。全身に血液を送り出す動脈の血流量も測った。

 食後90分間の体重1キロ当たりの平均エネルギー消費量(安静時の値との差)は、早食いの時が7カロリーだったのに対して、食品がなくなるまでよくかんで食べた時には180カロリーだった。この違いは食後5分ですぐ現れ、食後90分まで続いた。ゆっくり食べる方が体のエネルギー消費は驚くほど増えていた。研究グループは、体重60キロの人が1日3回の食事をゆっくりよくかんで食べると仮定して試算し、「1年間のエネルギー消費量は早食いの時より約11,000キロカロリー増える。これは、体の脂肪に換算すると1.5キロの減量に相当する」と指摘した。

 また、消化管への血流も、ゆっくり食べた時に増えていた。これらのデータを総合して「ゆっくり食べると、消化管の消化・吸収活動が増え、エネルギー消費量も高くなる」と結論づけた。食べる量を100キロカロリーに減らして比べても、同様の結果が得られた。小食の場合でも、早食いは避けた方がよいといえる。

 林直亨教授は「食事の量を同じにして、食べる速さの影響をちゃんと調べた研究はこれまでなかった。体重を増やさないためには、ゆっくりよくかんで食べた方がよいだろう。忙しい現代に、いつもゆっくり食べるのは難しいが、誰でも日常的に心がけてできる減量法のヒントになる」としている。

体重当たりのエネルギー消費量(安静値との差)の食後から変化
グラフ. 体重当たりのエネルギー消費量(安静値との差)の食後から変化。
●が早食い、○が遅食い。(提供:東京工業大学)

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