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ヒトゲノム転写制御の百科事典を完成

2014.03.28

 理化学研究所(理研)など20カ国114研究機関が参加するゲノム情報解読の国際コンソーシアムFANTOM(ファントム)は、第5期のプロジェクトとして、ヒトゲノムのDNAからRNAへの転写を制御する遺伝子配列を網羅的に解析した。遺伝子近傍のプロモーター(遺伝子近位制御部位)は約18万5千個、遺伝子の遠方にあるエンハンサー(遺伝子遠位制御部位)は約4万4千個だった。その活性をさまざまな細胞で測定した。

 31億対の塩基が並ぶヒトゲノムの転写制御因子に関する百科事典が完成したことになる。ヒトゲノム解読に続き、ヒトの分子レベルの理解を深める新たな到達点と言える。多様な病気の診断や治療にも結びつく成果で、3月27日付の英科学誌ネイチャーに2編の論文を発表した。理研予防医療・診断技術開発プログラムの林崎良英(はやしざき よしひで)プログラムディレクター、川路英哉(かわじ ひでや)コーディネーターと、理研ライフサイエンス技術基盤研究センター機能性ゲノム解析部門のピエロ・カルニンチ部門長、同センターゲノム情報解析チームのアリスター・フォレスト・チームリーダーが中心的な役割を果たした。

 2000年にRNAの機能をカタログ化することを目的に発足したFANTOMは2009年までに4期にわたって活動し、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の樹立など、生命科学に多大な貢献をしてきた。第5期では、ヒトゲノムDNAからRNAへの転写に関する遺伝子制御部位の網羅的な解析を続けてきた。

 世界中の共同研究者の協力により収集した約1000の細胞や組織(このうち正常細胞の種類は180種類以上)の細胞サンプルを解析し、プロモーター約18万5千個、エンハンサー約4万4千個の活性を測った。今回の解析で、これらの遺伝子制御部位の多くがそれぞれの細胞特異的に働いていることが分かった。がん細胞だけでなく、正常細胞に関する体系的な調節因子の活動の特徴を捉えた。

 解析には、理研が独自に開発したCAGE法を使った。今回の網羅的なデータは、幹細胞や皮膚の繊維芽細胞などから目的の細胞を作り出すための基盤になる。関連する膨大な基礎情報は、論文発表と同時に、人類共有の財産として誰でも無料で使えるよう、理研のWEBサイトと国立遺伝学研究所の日本DNAデータバンクのデータベース上で公開された。

 研究を率いてきた林崎良英さんは「東日本大震災で研究が1年以上中断するなど苦労しながら、国際共同で成し遂げた。ヒトのゲノムの転写制御因子は意外にものすごい数があった。特定の細胞ごとに働いている制御因子は数が限られており、そのネットワークに特徴がある。この制御のネットワークを変えれば、別の細胞に転換しうる。制御因子の調節で、ある細胞から別の異なる細胞に直接変えることも可能になる。その壮大な地図ができあがったともいえる。この研究で新しい領域も数多く生まれつつある。今後も、さまざまな病気と制御因子の関係を探るなどして、ファントム研究を発展させたい」と話している。

今回のゲノム解析データの例
今回のゲノム解析データの例。
横軸はゲノム上の位置。細胞の種類ごとに活性化の領域が異なることがわかる

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