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強くてしなやかな金属の新創製法を開発

2014.03.14

 金属材料の力学特性を飛躍的に向上させて、強さとしなやかさを併せ持つことが可能な、世界初の材料創製法の開発に、立命館大学理工学部機械工学科の飴山惠(あめやま けい)教授が成功した。

 金属材料は、強度を高めると、延性(伸び)を損なうことが避けられず、壊れにくさも低下してしまう。この弱点のため、金属材料による部品の小型化・軽量化には限界があった。飴山教授らが開発した「調和組織制御法」という金属材料創製法で、金属材料の長年の課題を解決できる可能性が高まった。

 調和組織制御法はまず、原料金属粉末の表面にのみ大きな歪みを与えることで、粉末表面にナノメートル寸法の微細結晶粒組織が形成する。その後、成形・焼結を行うと、微細結晶粒のネットワーク組織が粗大結晶粒を包み込む特異な構造の金属材料ができあがる。微細結晶が高い強度を発揮し、粗大結晶粒が延性を保つことで、高い強度と壊れにくさの両立を実現している。

 これまでに、チタン、アルミニウム、ニッケル、鉄、銅、コバルト合金、ステンレス鋼などほぼすべての金属材料で、従来の創製法に比べ、強度と壊れにくさの両方を高めるのに有効な方法であることを確かめた。生体材料としても使われる純チタンの場合、従来の手法よりも、引っ張り強さが1.5倍、壊れにくさが2.2倍、と同時に向上していた。

 4月からは、金沢大学医薬保健研究域の山岸正和教授と、この創製法で加工したコバルト合金や純チタンの金属材料を基に血管を広げるステントを試作し、実用化を目指して共同研究を開始する。

 この研究は、JST産学共創基礎基盤研究プロジェクトで実施した。また、国際的学術雑誌Material Science & Engineering:Aの3月号に掲載されるなど、20編以上の論文で報告している。飴山惠教授は「既存の金属材料の常識を覆すような創製法を開発できた。産業に広く応用してもらいたい」と話している。

新しく開発した調和組織制御法の概要
図1. 新しく開発した調和組織制御法の概要
調和組織制御法で製造した純チタン製ボルト・ナット。その構造を示す顕微鏡写真
図2. 調和組織制御法で製造した純チタン製ボルト・ナット。その構造を示す顕微鏡写真
この手法で製造した金属材料と原料の金属粉末を持つ飴山惠立命館大学教授
図3. この手法で製造した金属材料と原料の金属粉末を持つ飴山惠立命館大学教授

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