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避難所は出血性潰瘍の危険因子

2014.03.06

 東日本大震災は災害医療にも大きな教訓を残した。災害直後には避難所などの環境が出血性潰瘍の強いリスクファクター(危険因子)であることを、東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野の飯島克則(いいじま かつのり)講師と菅野武(かんの たけし)医師、下瀬川徹(しもせがわ とおる)教授らが見つけた。東日本大震災発生後3カ月間の消化性潰瘍を解析して災害急性期の出血性潰瘍の要因を探った。出血性潰瘍に関連するとされている抗血栓薬(抗血小板薬、抗凝固薬)や潰瘍のサイズに加えて、避難所などの環境で出血性潰瘍のリスクが高まっていた。

 出血性潰瘍はときに致命的ともなる重大な救急疾患だ。研究グループはこれまで、東日本大震災後の消化器性潰瘍を集計し、出血性潰瘍が前年の2.2倍に増加していたことを報告しているが、今回は、東北大学など宮城県内の7病院で大震災発生後3カ月間に治療した出血性潰瘍329例について解析した。その結果、出血性潰瘍は、避難所と民家避難で過ごしていた人は、自宅で生活していた人に比べ4.4倍にも増えていた。避難環境が災害直後の強力な出血性潰瘍のリスクファクターとわかったのは初めてという。

 飯島講師は「住み慣れた家を離れて避難所などで過ごすストレスが原因だろう。避難者の間で出血性潰瘍がピークに達するのは大震災後10日だった。災害で避難所などにいる人々に抗潰瘍薬を投与して出血性潰瘍を予防することは重要だろう」と提言している。

 2月15日の日本消化器病学会英文誌オンライン版に論文を掲載した。

大震災前後の出血性潰瘍の推移
図1. 大震災前後の出血性潰瘍の推移
(宮城県内7病院で2010年と11年の3月11日から3カ月間の比較)
避難環境のストレスが出血性潰瘍のリスクとなる仕組み
図2. 避難環境のストレスが出血性潰瘍のリスクとなる仕組み

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