電気を発生させながら海水からリチウムを分離する新技術を、日本原子力機構の核融合研究開発部門(青森県六ケ所村)の星野毅(ほしの つよし)研究副主幹らが開発した。3月1日に東京・西新宿で開かれた「最先端研究開発支援(FIRST)EXPO2014」で発表した。イオン伝導体を分離膜として使う手法で、既存の方法に比べて、低コスト、短時間で効率的に回収できる。星野さんは「将来懸念されているリチウム資源枯渇を解決する新技術で、すぐにも実用化が可能だ」と話している。
リチウムは蓄電池などに使われ、需要が増えている。現在はチリなどの南米で塩湖の水を自然蒸発させて回収しており、日本は南米諸国からの輸入に頼っている。アメリカ化学会の2013年4月の報告によると、将来は生産が追いつかず、資源不足に陥る懸念が指摘されている。星野さんらは、海水と希塩酸液の間にイオン伝導体を分離膜として入れた。すると、海水中のリチウムが選択的に膜を通過して希塩酸液の側に移り、回収できた。リチウムの移動に伴い、電気を発生した。海水中には無尽蔵のリチウムがあり、資源不足の懸念を一気に克服できる。海水の淡水化プラントで出る濃縮海水や、豆腐のにがり、電池中のリチウムのリサイクルにも使えるという。