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イネ冷害の発生メカニズムを解明

2014.02.28

 東北大学大学院の東谷篤志教授と宮城県古川農業試験場などの研究グループは、イネの冷害発生のメカニズムを明らかにし、ある種の植物ホルモンを糖と同時に与えることで冷害の被害を緩和させることに成功したと発表した。

 北海道から東北・関東にかけての太平洋岸地域では、春から夏にかけて「やませ」と呼ばれるオホーツク海からの冷たく湿った風が吹き込み、イネの低温障害(冷害)が発生する。冷害の主要因は、20℃以下の冷温によってイネの花粉が正常に形成されず、出穂(しゅっすい)しても受粉に至らず、種子が結実しなくなることだが、本質的な冷害発生のメカニズムは不明だった。

 研究グループは、おしべの先にあって花粉を作る器官「葯(やく)」の遺伝子を解析した。その結果、植物ホルモンのひとつ「ジベレリン」を生合成する遺伝子の働きが低温によって低下すること、それによって、活性型のジベレリンの量が減り、ジベレリン合成の前段階でとどまっていることが分かった。

 ジベレリンは、植物の成長や細胞分裂、組織の発生や分化などに必要な植物ホルモンだ。葯でのジベレリン量の低下は、花粉のもととなる始原細胞の増殖や葯壁細胞ができる発生プログラムに悪影響を及ぼし、冷害被害をもたらすものと考えられた。そこで、イネの花粉が形成される時期にジベレリンを与え、さらに糖を加えることで、冷温下でも花粉を作る能力が維持され、最終的にコメの収量の低下を抑えることに成功したという。

 イネの冷害対策として、これまでにもジベレリンを用いた実験例があり、「投与によって冷害を助長する」という、今回の研究結果と異なる報告がされていた。これについて研究グループは、ジベレリンの投与が花粉形成前の「幼穂形成期」に行われたために“負の効果”が生じたものだとしている。

 研究論文“Reduction of Gibberellin by Low Temperature Disrupts Pollen Development in Rice”は、米国の植物生理学誌『Plant Physiology』(オンライン版)に掲載された。研究は、農林水産省の新農業展開ゲノムプロジェクトの一環として行われた。

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