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ダウン症の神経細胞形成に関わる2遺伝子

2013.12.20

 東京大学大学院理学系研究科附属遺伝子実験施設の倉林伸博助教と眞田佳門(さなだ・かもん)准教授は、染色体異常によって「ダウン症」を引き起こすヒトの21番染色体から、脳の神経細胞を作らせないように働く2つの遺伝子を発見した。ダウン症ではこの2遺伝子が同時に過剰に働き、脳の縮小や知的障害などの症状が起きると考えられる。その働きを抑える薬や方法の開発など、今後の治療法の確立に大きな手がかりになると期待される。

 ダウン症は新生児800人当たり1人という高頻度で起きる疾患で、知的障害や特有の顔つき、心臓奇形などの症状が出る。脳では神経細胞の数が少なくなり、脳容積が小さくなることが知られ、これが知的障害の一因とも推察されている。こうした症状は、ヒトの21番染色体が正常な2本ではなく3本あること(トリソミー)によって、21番染色体上の遺伝子の量が1.5倍になることが原因とされる。しかし21番染色体にある約300個の遺伝子のうち、どの遺伝子が神経細胞の減少に関わるかは分からなかった。

 眞田准教授らは、マウス胎仔の神経細胞を作る「神経幹細胞」で、「DYRK1A」(タンパク質リン酸化酵素)と「DSCR1」(脱リン酸化酵素カルシニューリンの阻害因子)の2種類のタンパク質が強く働いていること見出した。これらのタンパク質を作る「DYRK1A遺伝子」と「DSCR1遺伝子」は、ヒトの21番染色体上にもある。

 そこで、DYRK1AとDSCR1遺伝子を、「子宮内胎児電気穿孔法」によってマウス胎児脳の神経幹細胞に導入し、過剰に働かせると、神経細胞が作られにくくなった。2遺伝子の片方のみを過剰に働かせても効果はなかった。さらに、ヒトの21番染色体上にある88個の遺伝子(DYRK1A・DSCR1遺伝子を含む)に相当する遺伝子が3個に増えているダウン症モデルマウスを用いて、DYRK1A遺伝子とDSCR1遺伝子の働きを阻害するRNAを神経幹細胞に導入した。その結果、通常のモデルマウスで見られる、神経細胞が作られにくくなる現象が緩和された。この2遺伝子が過剰に働くと、「NFATc」と呼ばれる転写因子の働きを抑制し、神経細胞が作られにくくなることも分かった。

 研究論文“Increased dosage of DYRK1A and DSCR1 delays neuronal differentiation in neocortical progenitor cells”は『Genes and Development』に掲載された。

ダウン症の染色体
「ダウン症の染色体」

 

通常のヒト染色体は、22対の常染色体と1対の性染色体の計23対(46本)からなる。ダウン症は、21番染色体が1本余分の計3本になることで発症する。DYRK1AとDSCR1の遺伝子は21番染色体に存在する。

 (提供:東京大学)

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