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ヒトiPS細胞で3D肝臓作成

2013.07.04

 ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から直径5ミリメートルほどの立体構造の“ミニ肝臓”を作り、マウスの体内で正常に働かせることに、横浜市立大学大学院医学研究科の谷口英樹教授と武部貴則助手らのグループが成功した。研究論文を英国科学誌『Nature』(オンライン版、3日)に発表した。臓器移植に代わる新たな治療法や創薬の研究開発につながるものと期待される。

 研究グループは、ヒトのiPS細胞を培養して肝臓細胞に変わる一歩手前の「前駆細胞」を作った。これに、血管を作り出す「血管内皮細胞」と細胞同士をつなぐ働きをもつ「間葉系細胞」を加えて共培養した。その結果、培養48時間程度でこれら3種類の細胞が球状に集まって、3次元的な組織構造をもつ肝臓の「原基」(肝芽、Liver Bud)ができた。

 これを免疫不全マウスに移植したところ、48時間程度の早期の段階でヒトの血管網が作られ、血流も観察できたほか、タンパク質の合成や薬物の代謝などといったヒトの肝臓と同じ機能を持つことも確認できた。さらに、薬剤によって肝不全を発症させた免疫不全マウスに移植したところ、30日後の生存率は9割と、無治療の3割に比べて生存率がはるかに改善されており、移植したヒト肝細胞が本来の機能を発揮していることが分かったという。

 今回開発の技術は、肝臓だけでなく腎臓やすい臓などの他の臓器の移植治療にも応用が可能で、臓器不全症を対象とした「臓器原基移植療法」(Organ bud transplantation therapy)という新たな治療法の提案にもつながる。さらにiPS細胞から得られたヒト肝細胞は、薬学研究における代謝安定性試験や酵素誘導、肝毒性試験など、医薬品開発での利用も考えられる。

 今回の研究は、科学技術振興機構:研究成果展開事業・戦略的イノベーション創出推進プログラム(S-イノベ)における研究課題「iPS細胞由来ヒト肝幹細胞ライブラリーの構築によるファーマコセロミクス基盤技術開発」および文部科学省:科研費[新学術領域研究「バイオアセンブラ」]と科研費[若手研究(A)]、横浜市立大学 先端医科学研究センター「研究開発プロジェクト」などの助成で行われた。

iPS細胞からヒト肝臓の原基(臓器の種)が形成される過程
iPS細胞からヒト肝臓の原基(臓器の種)が形成される過程
上段(肉眼像):培養時間の経過とともに、3種類の細胞が一つに集まって来る。
(提供:横浜市立大学)

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