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文字検索の消費電力、1/100に削減

2013.06.12

 東北大学省エネルギー・スピントロニクス集積化システムセンターと日本電気(NEC、本社・東京都港区)は、電子のもつ「電荷」と自転による微小な磁石としての性質「スピン」を利用する技術(スピントロニクス)によって文字検索用の論理集積回路を試作し、従来の文字検索処理に比べ、消費電力を1/100に削減できたことを発表した。

 スピントロニクスを用いた論理集積回路では、磁石の反転を演算結果データの記憶に利用するので、電源を切ってもデータが消えない性質(不揮発性)をもつ。このため、さまざまな電子機器の待機電力をゼロにできる省電力化技術として注目されている。研究グループもこれまで、この技術を用いた汎用検索集積回路(TCAM)や画像処理プロセッサなどを試作し、動作実証を行ってきた。

 今回試作した文字検索用の論理集積回路では、要素回路として「多機能CAMセル」を開発し採用した。同セルは、電源を切るとデータが消えるDRAMなどの記憶素子を使わない不揮発性の論理集積回路であり、現在の検索処理で行われているDRAMとCPU(中央演算処理装置)間のデータ転送を無くすことで高速処理を実現させ、データ転送に使う消費電力も無くすことができた。

 また、これまでの文字検索では、記憶されている文字列すべてに対して検索を行う必要があったが、同セルでは、検索した文字が途中で合致しなければ、それ以上の不要な検索をさせない工夫を加えることで、さらに消費電力を削減した。

 こうした省電力に特化した多機能CAMセルの採用で、検索用論理集積回路では必要な回路のみが動作し、大幅な電力削減につながった。動作の実証実験では、32文字までの索引語を4000語(1メガバイト)まで記憶できる集積回路チップを用いて検索したところ、動作電力が25.7 mW、待機電力がほぼゼロに抑えられた。研究グループは「素子技術が進展し、ギガビット級のスピントロニクス論理集積回路が実現できるようになると、実用化への道が拓かれる」と述べている。

 研究成果は、京都市で開かれている半導体関係の国際シンポジウム「Symposium on VLSI Circuits (VLSI Circuits) 2013」でも13日発表する。研究成果の一部は、内閣府の最先端研究開発支援プログラム(FIRST)「省エネルギー・スピントロニクス論理集積回路の研究開発」によって得られた。

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