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赤ちゃんの“人見知り”は心の葛藤だった

2013.06.06

 生後半年を過ぎた多くの赤ちゃんの“人見知り”は、「相手に近づきたいけど、怖いから離れたい」という葛藤の表れであることが、東京大学大学院総合文化研究科の岡ノ谷一夫教授や同志社大学の松田佳尚特任准教授らの研究で分かった。

 研究グループは、生後7-12カ月の赤ちゃん57人の母親に、赤ちゃんのもって生まれた気質についてアンケートし、「人見知り」度合いと、相手への「接近」と「怖がり」の2つの気質の関係を調べた。その結果、人見知りが強い赤ちゃんは、「接近」と「怖がり」の両方の気質が強く、「近づきたいけど怖い」という心の葛藤を持ちやすいことが推察された。

 また、赤ちゃんに母親と他人の顔の映像を見せ、口、鼻、目のどこを長く見ているかを視線追跡装置で観察した。人見知りが強い赤ちゃんは、弱い赤ちゃんよりも、母親、他人にかかわらず、最初に相手と目が合ったときに「目」を長く見つめ、凝視するような目を示した。さらに人見知りが強い赤ちゃんは、相手が自分と向き合った顔よりも、よそ見をしている顔を長く観察していることが分かった。

 今回の成果によって、これまで知られていた学童期の人見知りの原因とされる「接近と回避の葛藤」が、わずか1歳前の赤ちゃんでもみられることが示された。研究グループは「人見知りのメカニズムを知ることで、人見知りを全くしないとされる発達障害の理解にも役立つことが期待される」と述べている。

 赤ちゃんの人見知りについては、これまでは「単に人を怖がっている」と考えられてきたが、快と不快の感情が混じっている“はにかみ”を示す赤ちゃんもおり、「怖がり」だけでは説明できなかったという。

 研究成果は、JST戦略的創造研究推進事業 ERATO型研究プロジェクト「岡ノ谷情動情報プロジェクト」(平成20-25年度)により行われた。研究論文“Shyness in early infancy: Approach-avoidance conflicts in temperament and hypersensitivity to eyes during initial gazes to faces(人見知りの赤ちゃんは接近したい気質と避けたい気質が葛藤している。最初に顔を見る時は相手の目に敏感である)”は5日、米オンライン科学誌『PLOS ONE』に掲載された。

人見知りが強い赤ちゃん群と人見知りが弱い赤ちゃん群で、目、鼻、口を見ていた時間の比較
人見知りが強い赤ちゃん群と人見知りが弱い赤ちゃん群で、目、鼻、口を見ていた時間の比較

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