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両生類の四肢再生に必要な3因子発見

2013.06.06

 岡山大学異分野融合先端研究コアの佐藤伸(あきら)准教授らは、メキシコ・サラマンダー(ウーパールーパー)などの有尾両生類が手足を再生する際に必要な3種類のタンパク質を発見したと発表した。実際に皮膚の損傷部位にこれらを作用させることで、四肢構造を作ることができたという。より高等な脊椎動物の手足などの再生研究に寄与するものと期待される。

 メキシコ・サラマンダーは、手足などの器官再生ができる動物として知られている。これまでの研究では、皮膚を損傷させると修復だけが起こるが、損傷部位に神経を外科的に配置すると四肢再生へと進むことが分かっていた。神経から分泌される因子が再生開始をコントロールしているとみられるが、それが具体的にどのような物質かは不明だった。

 研究グループは、メキシコ・サラマンダーの本来の四肢とは別の場所に余分な肢を作らせ、その時にどのような遺伝子が働いているか解析した。その結果、四肢再生には大きく2つの遺伝子の情報伝達経路が関わり、3種類(GDF5、FGF2、FGF8)のタンパク質が作用していることが分かった。

 皮膚の損傷部位にGDF5タンパク質を添加すると、未分化細胞からなる突起状の「再生芽」ができたが、四肢の形成には至らなかった。損傷部位にGDF5とFGF2、FGF8の3種類のタンパク質を添加すると、神経を配置した時と同じような遺伝子の働き方がみられ、再生芽からは、軟骨や靭帯などの結合組織をもった四肢構造が作られたという。

 今回の成果について、研究グループは「世界で初めて、人為的かつ人工物によって高次構造の再生を誘導した点が大きな進展だ」。有尾両生類の四肢再生は、完全に分化した皮膚の真皮細胞がリセット(脱分化)されて未分化細胞となり、それが結合組織の細胞に変化する。今回得られた因子をさらに詳しく検証することで「生体が持つ“脱分化作用”を明らかにすることができる」と述べている。

 研究は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(さきがけ〈個人型研究〉)研究領域「iPS細胞と生命機能」・研究課題「細胞リプログラミングの段階的制御」によって得られた。

 研究論文“Nerve independent limb induction in axolotls(両生類において四肢形成を誘導できる分子の発見)”は近く、米国科学誌「Developmental Biology」に掲載される。

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