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大集団ほど“まばたき”は増える

2013.06.03

 ゴリラやチンパンジーなどの霊長類が自発的に行う「まばたき」は、それぞれの動物の集団サイズが大きくなるにつれて頻度が増えることが、京都大学霊長類研究所の友永雅己准教授や田多英興・元東北学院大学教授らの共同研究で分かった。霊長類はまばたきを、単に眼球表面の乾燥を防ぐなどといった生理的理由ではなく、積極的に社会的なコミュニケーションに利用している可能性があるという。

 研究グループは、日本モンキーセンター(愛知県犬山市)や八木山動物園(仙台市)、千葉市動物園(千葉市)にいる71種の霊長類、計141個体を対象に、自由に過ごしている中でのまばたき行動を約5分間ずつビデオに記録した。この記録をもとに、それぞれの「まばたき頻度」(平均瞬目率:1分間当たりの回数)や持続時間(まぶたの伏せ始めから再び開くまでの時間)などを計算し、種ごとに集計した。それをさらに、生活サイクル(昼行性・夜行性)や生息環境(地上性・半地上性・樹上性)、平均の集団サイズ、平均体重などとの関係を分析した。

 その結果、まばたきの1分間当たりの頻度は全種平均10.9回。最多はシロガオ・オマキザルの29.8回、次いでニシローランド・ゴリラが29.4回だった。最も少なかったのはアフリカに生息する原始的なサル(ロリス科)の仲間「ポットー」で、観察時間中一度もまばたきをしなかった。アジアにいる同じ仲間のスローロリスも0.2回と非常に少なかった。ちなみに、人間のまばたき頻度は1分間に20回ほどだ。

 こうしたまばたき頻度は、平均体重が増加するにつれて増え、昼行性の霊長類の方が夜行性の種よりも、圧倒的にまばたき頻度が多いことが明らかになった。さらに、平均の集団サイズ(個体数)が増えると、まばたき頻度も増えることが分かった。これまでは、まばたきの間は外界からの情報が遮断されるので、捕食者(天敵)などへの警戒や、群れ内での競争という点からも、回数は少ない方がよいと考えられていた。

 今回の結果について研究グループは、まばたき行動が「毛づくろい」行動と同様に「社会的なコミュニケーションのために利用されている可能性を強く示している」と述べ、人間のコミュニケーションや“こころ”の進化を考える上でも「興味深い視点を与えてくれる」という。

 研究成果は、京都大学霊長類研究所共同利用研究の一環として行われ、科学研究費補助金基盤研究(S)「海のこころ、森のこころ ? 鯨類と霊長類の知性に関する比較認知科学」の援助を受けた。論文“Eye-blink behaviors in 71 species of primates”は5月31日、米国のオンライン科学誌「PLOS ONE(プロス・ワン)」に掲載された。

ドリルのまばたきの例 (提供:京都大学霊長類研究所)
ドリルのまばたきの例 (提供:京都大学霊長類研究所)

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