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東京のヒキガエル、混血で生存率アップ

2013.05.10

 東京都内に昔からいるヒキガエル集団が、西日本から移入されたヒキガエルとの交雑を重ねった結果、より生存率の高い集団へと変化していることが、東京大学大学院総合文化研究科の嶋田正和教授や長谷和子さん(博士課程3年)、放送大学教養学部の二河成男教授らの研究で分かった。都市部に分布するカエル類の遺伝的な多様性や適応度が、移入された亜種によって高く維持されていることを示した世界でも初めての事例だという。

 日本の本州には、近畿-中部地方を境界として、東日本にアズマヒキガエル、西日本にニホンヒキガエルの2つの亜種系統が生息している。東京都は本来がアズマヒキガエルの自然分布域だが、近年ではその形態的な特徴から、人為的に持ち込まれたニホンヒキガエルとの交雑の疑いがもたれていた。

 研究グループは2008-11年に、都内の文京区や府中市、三鷹市などの6カ所と栃木、茨城、埼玉、千葉、静岡などの周辺各県、および京都府と広島県の合計19カ所の池で捕獲したヒキガエル(成体64匹)について、細胞核内のDNA(デオキシリボ核酸)や母親由来のミトコンドリアDNAを調べた。

 その結果、都内のヒキガエル集団は、在来のアズマヒキガエルと西日本のニホンヒキガエルとの交雑による「混成個体群」であることが分かった。さらに、交雑を重ねることでニホンヒキガエルの遺伝子がアズマヒキガエル集団へと浸透し、アズマヒキガエルの遺伝的組成がニホンヒキガエルの遺伝子型に置き換わりが進んでいることも示された。このとことは形態の測定でも確かめられた。

 また、捕獲したオタマジャクシのふ化してからの日数と生存率との関係を調べたところ、都内のオタマジャクシは、同じ東日本の周辺各県のものよりも明らかに高い生存率を示すことが分かった。「東京のヒキガエルは移入亜種に助けられる形で適応度を上げ、個体数を維持していることが考えられる」という。

 研究論文“Population admixture and high larval viability among urban toads”は学術誌「Ecology and Evolution」(オンライン版、4日)に掲載された。

各地で採取したヒキガエルのミトコンドリアDNAの構成。本来がアズマヒキガエルの生息域である東京エリアで、ニホンヒキガエルからのミトコンドリアDNAの割合が大きい。
(掲載論文から)
各地で採取したヒキガエルのミトコンドリアDNAの構成。本来がアズマヒキガエルの生息域である東京エリアで、ニホンヒキガエルからのミトコンドリアDNAの割合が大きい。(掲載論文から)

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