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100年来の真珠養殖技術を解明

2013.03.19

 独立行政法人・水産総合研究センター(横浜市西区)と麻布大学、三重県水産研究所の研究チームは、100年以上前に日本で開発されたアコヤガイの真珠養殖技術について、初めてその仕組みを遺伝学的に解明した。今後は、良質な真珠を作る遺伝子を見つけ、それを生産するアコヤガイの飼育管理の改善につなげたいという。

 真珠生産の手順は、貝殻を形成する外套膜(がいとうまく)の一部をアコヤガイ(供与貝)から切り取り、貝殻などで作られた球形の核(真珠核)と一緒に他のアコヤガイ(母貝)の生殖巣内に移植する。この組織片は真珠核の表面を包み込んだ「真珠袋」となり、真珠核の表面に真珠層を形成する。この母貝を海で半年から1年以上飼育し、真珠袋に真珠層を作らせ続けて、大きな真珠を得る。

 こうした真珠の養殖技術は1907年(明治40年)までに、三重県で御木本幸吉(1858-1954年)らが開発し、その後実用化されて現在に至っているが、移植した外套膜が母貝の体内で、実際に存在しながら真珠を形成しているのか、これまで確認されていなかった。

 研究チームは、アコヤガイのDNA(デオキシリボ核酸)を調べ、真珠層形成に関与する2つの遺伝子の塩基配列がアコヤガイの個体によって異なることをつきとめた。さらに供与貝の外套膜、真珠袋、母貝の外套膜で働いている遺伝子を調べたところ、移植してから18カ月目までの真珠袋では、供与貝と同じ遺伝子がそのまま働いていることが分かった。

 その結果、真珠層を形成するのは供与貝由来の真珠袋であり、母貝は栄養や酸素、真珠層の材料となる物質などを真珠袋に与え、不要な老廃物は排除するなど、真珠袋の細胞が生き続けられる環境を提供する役割を担うと考えられるという。

真珠養殖の方法
真珠養殖の方法(提供:独立行政法人水産総合研究センター)

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