現代の社会生活を大きく変えた携帯電話。その世界初の携帯電話のネットワークやシステム、標準規格を築くなどの先駆的な貢献をしたとして、全米工学アカデミー(NAE)は、元NTT技術者で金沢工業大学名誉教授の奥村善久さん(86)ら5人に「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」を贈ることを決めた。19日にワシントンD.C.で授賞式を行う。
同賞の受賞は、日本国籍としては奥村さんが初めて。他の4人は元モトローラー社のマーチン・クーパー氏、元ベル研究所のジョエル・エンゲル氏とリチャード・フレンキール氏、ノルウェーのトーマス・ハウグ氏。合わせて賞金50万ドル(約4,700万円)が贈られる。
奥村さんは1926年、金沢市生まれ。旧制金沢工業専門学校(現・金沢大学)卒業。日本電信電話公社(NTT)在職中に、将来の移動体通信を予想して、距離や地形による電波の伝播の研究に取り組み、電波が伝わる環境を分類した「奥村モデル」を提唱するなど、携帯電話システムの基を築いた。70年の大阪万博では携帯電話の試験運用も行った。79年から2000年まで金沢工大教授を務めた。
同賞は1989年の創設以来、社会に貢献する業績を成し遂げた工学者に授与し、工学分野の米国版"ノーベル賞"ともいわれる。これまで、集積回路(IC)やターボジェットエンジン、コンピュータ言語「フォートラン」、光ファイバー、インターネット、GPS(衛星利用測位システム)、カメラなどの電荷結合素子(CCD)、半導体記憶素子のDRAM、液晶ディスプレーなどの先駆者に贈られている。