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113番元素の合成確証

2012.10.01

 理化学研究所(埼玉県和光市)は、仁科加速器研究センターの森田浩介・准主任研究員らの研究グループが2004年に作り出した元素が、「元素周期表」の113番となる新元素である確証を得たことを発表した。国際学会に認定されれば、新元素の命名権が与えられ、元素周期表に初めて日本発の元素名が記載されることになる。

 「水兵リーベ僕の船…」の語呂合わせでおなじみの元素周期表は、元素を原子核にある陽子数の順番に並べたもので、1869年にロシアの化学者メンデレーエフが発表した。当時、記載されていた元素は、自然界に存在する原子番号1番の水素(H)から92番のウラン(U)までで、その後、人工的に合成された元素が加えられ、現在は116番のリバモリウム(Lv)まで計114種類の元素が記載されている(113番、115番、117番、118番の4種類は未認定)。

 研究グループは2003年から、原子番号30の亜鉛(Zn)のビームを光速の10%ほどに加速し、原子番号83のビスマス(Bi)に衝突させて融合反応を起こさせる実験を繰り返した。その結果、04年7月と05年4月の2回、原子番号113番の新元素を1個ずつ合成し、それが瞬時のうちに次々と安定な別な原子核に変化していく崩壊連鎖を観測した。しかし当時は、データ不足として新元素は認定されなかった。

 そこで研究グループは、ビームと合成元素を効率よく分離する装置を開発し、さらに実験を繰り返したところ、今年8月12日に3個目の113番元素の合成に成功し、04、05年に観測された崩壊連鎖に続く新たな崩壊経路を観測し、最終的に原子番号101のメンデレビウム(Md)になったことを確認した。これまでの3個の観測データにより、合成した元素は113番元素であり、平均寿命は2ミリ秒であることも分かったという。

 新元素の合成を証明するには、その元素が崩壊連鎖を起こして既知の原子核に到達したことを示す必要がある。米国、ロシアの共同グループが別の方法で113番、115番、117番、118番の新元素を合成したと主張しているが、いずれも既知の原子核まで至っていないため、元素発見の優先権は認定されていない。

 優先権の認定は、「国際純正・応用化学連合(IUPAC)」と「国際純粋・応用物理連合(IUPAP)」が推薦するメンバー6人による合同作業部会が審議する。今回の理研の113番元素については、早ければ年内にも結論が出る見通し。新元素名として「ジャポニウム」や、物理学者の仁科芳雄博士(1890-1951年)にちなんで「ニシナニウム」などが検討されているという。

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