目や肺、心臓、皮膚などのさまざまな場所に小さな腫れ物(肉芽腫)ができて視力低下や呼吸苦、不整脈、発疹などの症状が起きる厚生労働省指定の難病「サルコイドーシス」は、ニキビの原因となる「アクネ菌」が引き起こしていることが、東京医科歯科大学大学院の江石義信教授らの研究で明らかとなった。これまでは結核菌が原因として疑われていた。
原因不明の難病「サルコイドーシス」について、日本では1978-84年に旧厚生省難病研究班が微生物的な検索を行い、病変部のリンパ節からアクネ菌が約8割の症例から分離されていたが、アクネ菌は皮膚に常在する菌であり、他の病気の検体からも約2割の症例で見つかっていることから、アクネ菌が原因菌だと確定できなかった。
江石教授や医学部付属病院病理部の根木真理子助教らは、マウスを使ってサルコイドーシスの肉芽腫に対する抗体を作らせると、これがアクネ菌の培養上清液と特異的に反応することや、病変部リンパ節からアクネ菌のDNAが検出されること、患者にアクネ菌に対するアレルギー素因があることなどから、アクネ菌が原因菌である可能性をつかんだ。さらに日本とドイツのサルコイドーシス患者196人の検体を調べたところ、8割前後の患者の病変部からアクネ菌が見つかった。
これまでサルコイドーシスは、副作用の強いステロイド剤以外に治療法がなかったが、これからはニキビ治療の抗菌剤を用いる新しい治療法の開発も期待されるという。研究結果は米国・カナダの医学専門誌「モダン・パソロジー」(5月18日、オンライン版)に発表された。