がんや糖尿病などや物理的外傷によって神経が損傷されて起きる痛み「神経障害性疼痛(とうつう)」の原因物質は「インターフェロン調節因子8(IRF8)」というタンパク質であることを、九州大学薬学研究院の井上和秀教授や津田誠准教授などのグループが特定した。
「痛み」は脳や脊髄での免疫を担当する細胞「ミクログリア」の活性化によって起こるとされるが、その作用の仕組みについては不明だった。研究グループは、さまざまな生体分子を放出させる役割を持つIRF8がミクログリアだけで増えていることを発見した。IRF8を作れなくしたマウスで調べたところ、痛みの度合いをかなり抑えられたという。
神経障害性疼痛にはほかに帯状疱疹(ほうしん)後神経痛や坐骨神経痛、腰痛の症状が長く続く慢性腰痛などがあり、触刺激だけでも激しく痛みを感じてしまう。アスピリンなどの鎮痛剤やモルヒネなどの麻薬性鎮痛薬も効かないとされることから、IRF8の働きを抑えるような方法が見つかれば、痛みの新しい治療法につながるものと期待される。今回の研究成果は、米科学誌「セル・リポーツ(Cell Reports)」(4月5日付)に発表された。