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謝って済むこと、済まないこと

2012.03.26

 相手を侮辱した文面でも、最後にそれを謝罪する一文を書き添えると、相手の不快感は消えないにしても「怒りによる攻撃性」は抑えられることが、名古屋大学大学院情報科学研究科の川合伸幸准教授と科学技術振興機構(JST)の久保賢太研究員らのグループによる研究で分かった。

 男女48人の大学生に、「飲酒年齢の引き下げ」などの社会的な問題に対する意見を書いてもらい、半数の人には「大学生が書いた文章とは思えません。この人には学校で一生懸命、勉強してもらいたい」とのコメント付きの評価書を返した。もう半数の人には同じコメントの最後に「こんなコメントをしてすみません」との謝罪文を付けた。

 謝罪のなかった大学生グループは、「怒り」によって左右の脳活動(左右前頭側頭部のα波パワ値)が不均衡になり、心拍数も増加した。心理反応(状態攻撃性尺度STAXI日本語版、快・不快尺度PANAS日本語版)でも攻撃性と不快感の高まりがみられた。一方の謝罪された大学生グループは、脳活動に左右の差がなく、心拍数もさほど増えなかった。心理反応では不快感は高まったが、攻撃性は特に増加することはなかったという。

 この結果、謝罪が有効なのは「怒り」のもつ「攻撃性」に対してのみで、「不快感」には有効ではないことが分かった。これらの研究は、インターネットの利用など、文字でのやり取りで誤解を生むことがないように、非対面でのコミュニケーションをサポートする情動インタフェイス(他人の情動を判断し提示するツール)の開発などにつながるものと期待される。

 今回の研究成果はJSTの戦略的創造研究推進事業ERATO型研究「岡ノ谷情動情報プロジェクト」(研究総括、岡ノ谷一夫・東京大学大学院総合研究科教授)に得られた。

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