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スカンジナビアの針葉樹は氷河期を生き延びていた

2012.03.09

 スカンジナビア半島の豊かな北方針葉樹林は、7万年前から1万年前まで続いた「最終氷期」に途絶え、その後、東ヨーロッパなど他の地域からの針葉樹が分布拡大したものと考えられていたが、ミトコンドリアDNA分析の結果、最終氷期にも生き残り、現在の森林地帯をつくったことが、東北大学大学院農学研究科の陶山(すやま)佳久准教授やノルウェー、スウェーデンなどの9カ国による国際共同研究によって明らかになった。

 共同研究チームは、現在、欧州に分布している針葉樹トウヒのミトコンドリアDNAを調べたところ、スカンジナビア特有の系統があることが分かった。スカンジナビアの湖の堆積物から得られた古代DNAの分析によって、この特有の系統がすでに1万300年前には存在していたこと。さらに湖の植物遺体の分析によって、約2万年前にはマツやトウヒが分布していたことなどが分かった。

 陶山准教授らによると今回の研究は、最終氷期においても氷河に覆われなかった“避寒地”がスカンジナビア半島にあり、北方針葉樹が生き残っていたことを示す。これまでの氷河期時代からの植物分布についての常識を覆すもので、気候変動下における樹木の分布・生き残りに新たな視点を提供するものだとしている。研究成果は米科学誌「サイエンス」(3月2日付)に発表された。

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