アフリカのサイが組織的な密猟によって再び危機的な状況にあることを、世界自然保護基金(WWF)が明らかにした。ベトナムをはじめとするアジア諸国でサイの角が伝統薬の成分として高値で取引されていることが、密猟急増の原因と考えられている。最大のサイ生息国で保護活動にも熱心に取り組んでいる南アフリカの政府担当者が昨年10月にベトナムを訪れ、違法なサイの角取引をやめさせる方策を話し合った。
WWFジャパンによると、密猟が増え出したのは2008年で、83頭が犠牲になった。南アフリカ政府は2010年に162件の密猟を取り締まったが、同国で違法に殺されたサイは同年だけで333頭に上った。これは前年に比べ3倍も増えており、今年になってからも既に6頭以上が殺されている。
密猟の方法はヘリコプター、暗視スコープ、獣医用麻酔、消音器を備えた犯罪ネットワークによるものとなっており、夜間、警備をかいくぐって行われているという。
アフリカでは1960年代に10万頭いたクロサイが密猟によって一時約2,400頭に激減し、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで最も絶滅の恐れが高いCR(近絶滅種)ランクに指定されている。またアフリカ中部に2,000頭余りいたキタシロサイは、生息地各国で内戦が起きている間に絶滅した。他方、南アフリカ政府の努力によって19世紀の終わりに100頭以下にまで減少したミナミシロサイが現在約20,000頭まで増え、クロサイも南アフリカや東アフリカ諸国の努力で約4,200頭まで回復している。
「サイの角にはがんに効くといった声もあるが医学的な証拠はない。問題解決の鍵は狙われるサイの角を消費しているアジア諸国にあり、供給サイドと需要サイドの両端における調和のとれた国際的な取り組みだけがサイの密猟急増という危機の目を摘み取ることができる」とWWFは言っている。