医師不足が最も深刻な地域で携帯電話を利用した診療支援を可能にする遠隔医療システムの実証実験を、東北大学が18日から沖縄県宮古島で始める。
このモバイル医療情報通信システムは、「電子診療鞄(かばん)」と名付けられ、医師の代わりに看護師が患者宅に持参し、病院や診療所の医師に患者の高画質映像や生体情報をオンラインで送ることができる。へき地や離島のほか、救急車、災害現場などでの活用が期待されている。東北大学の山家智之・加齢医学研究所教授、吉澤誠・サイバーサイエンスセンター教授らがソニー、フクダ電子、オムロンヘルスケア、本多電子、ウィルコム,ネットワンシステムズ、スリーリンクスなどと共同で開発した。
既に第1号試作器を用いた模擬実験を仙台市の在宅医療現場で実施済みで、このほど改良型第2号試作器の完成を機に、沖縄の離島、宮古島のうむやすみゃあす・ん診療所で実証実験に取りかかることになった。在宅療養者を訪問した看護師から携帯電話で送られてくる動画像データと生体情報を基に診療所にいる医師が在宅療養者を診察、必要に応じて看護師に適切な指示をする。
電子鞄の中身は、送信パソコン、モバイルカード、12誘導心電計、血圧計、超音波診断装置、ビデオキャプチャボックス、ウェブカメラなどから成る。
9月29日に厚生労働省が発表した「病院等における必要医師数実態調査の概況」によると、全国の医療機関が必要とする医師の数に対し、現在の医師数は約9割しかいない。さらに地域による医師不足の程度も大きな差があることが明らかになっている。