アブラムシが新たな共生細菌に感染することで、それまで餌にならなかった植物上でも生存、繁殖できる能力を獲得することを理化学研究所と産業技術総合研究所の研究チームが突き止めた。
特殊機能をもつ共生微生物がほかの昆虫種に感染すると、新たな能力を持った昆虫が生まれることを示した世界初の研究成果として、新たな害虫防除法の開発につながる可能性が期待されている。
理化学研究所の土田 努基礎科学特別研究員、松本 正吾主任研究員と、産業技術総合研究所生物共生進化機構研究グループの武馬研究グループ長、古賀 隆一主任研究員が研究対象にしたのは、ソラマメヒゲナガアブラムシで、シロツメクサという植物では生存できない。シロツメクサ上で生存・繁殖できるエンドウヒゲナガアブラムシの共生細菌であるRegiellaをソラマメヒゲナガアブラムシに注入したところ、3系統のうち2系統でシロツメクサ上での生存期間が延び、成虫になって産む子の数も増加することが確認できた。
共生細菌の移植は体液を微量に注入する方法で行われ、3系統すべてで親から子への感染が見られ、移植後70世代経った後でも共生細菌の感染率は100%だった。
アブラムシは、旺盛な繁殖力を持ち、直接、農作物の被害を与えるほか、ウイルス媒介による病害ももたらす厄介な害虫として、世界中で効果的な防除法が求められている。