総合科学技術会議は、科学技術振興調整費で口蹄疫対策に資する緊急研究を実施することを決めた。文部科学省、農林水産省、環境省が共同で、口蹄疫の早期発見手法の開発や家畜から野生動物への感染拡大リスク把握と対処法の開発などを進める。今年度予算は約5,000万円で、来年度以降は農水省が通常予算で対応する。
宮崎県で発生した口蹄疫の発見が遅れた一因として、2000年に発生したときの経験に基づいて判断したことが指摘されている。特に今回の発生では、水疱(すいほう)の見られない個体について、通報までに時間がかかった。今回の緊急研究では、口蹄疫と類似の症状を示すが水疱を形成しない牛下痢・粘膜病、牛丘疹(しん)性口炎、ブルータング、イバラキ病などについて、現場で簡便に検出する検査キットを開発するとともに、海外で市販されている口蹄疫簡易検査キットの感度、特異性を検証する。
口蹄疫が家畜からシカなどの野生動物に感染した場合、家畜へのさらなる感染拡大を防ぐための措置は、国によって異なる。緊急研究では、諸外国の口蹄疫に対する最新の野生動物対策を調査し、シカ、イノシシなどの国内の野生動物の生息状況に基づく口蹄疫ウイルス感染時の危機管理モデルを検討する。国内の野生動物生息調査のモデル地区は、一定のデータ集積のある北海道地区などを想定している。日本の地形や畜産形態に合った危機管理体制を提案することで、日本の野生動物個体群の潜在的な口蹄疫リスクについて、種類と程度を明確化し、その生息環境がウイルスに汚染された場合のまん延防止策の立案につなげていく。
さらに、口蹄疫に対する消毒法などについて海外の最新対策を調査して検討、防疫指針や対応マニュアルなどに反映する。