遺伝性難聴の根本的な原因とみられる内耳の異常とその原因を京都大学の研究チームが突き止めた。
北尻真一郎・京都大学医学部付属病院助教らが研究対象としたのは、TRIOBPという生体分子。米国立衛生研究所(NIH)の分子遺伝学研究室で、既にこのTRIOBPをつくる遺伝子に異常があると難聴になることが分かっていたが、TRIOBP自体の働きは不明だった。マウスを使った実験で北尻助教は、TRIOBPが内耳の不動毛と呼ばれる部位の根の部分に局在することをまず確かめた。
不動毛というのは有毛細胞の外側にあり、内部はアクチンという繊維状のタンパク束でできている。TRIOBPは密度の高いアクチン束をつくる役割を持つことが続いて解明され、TRIOBPをつくる遺伝子を欠くノックアウトマウスで実験したところ、これらのマウスは不動毛の根をつくることができず、高度な難聴になることも分かった。
ヒトもマウス同様、音の刺激を内耳の不動毛が受けて震動すると有毛細胞がこれを電気信号に変え、神経を介して脳に伝わることで音を感じる、と考えられているが、不動毛の根が形成されないためにこの信号の流れが途切れてしまう、と北尻助教は見ている。