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大学院進学時の移動効果はっきりせず

2010.02.08

 大学院(修士課程)進学時に、在籍していた大学・高専とは別の機関を選ぶ学生は約2割程度いるものの、移動の効果についてははっきりしないことが、文部科学省科学技術政策研究所の調査で明らかになった。

 科学技術政策研究所の調査対象となったのは、7旧帝大に筑波、東京工業、早稲田、慶應、広島を加えた12大学の理工系大学院修士2年生約13,000人。このうち約2,500人から回答が得られた。大学院進学時に指導教官を替えた学生は、機関を移動した約2割(19.8%)を含め約3割(32.0%)だった。

 機関移動者のうち18.0%が博士課程まで進学予定で、これに対し内部進学生で博士課程まで進学を予定しているのは11.5%。修士進学時に機関を替えた学生の方が研究・学習意欲が高いことを反映していると見られ、または移動しなかった学生よりも、所属する大学院の教育・研究をより肯定的に評価する傾向が見られた。一方、研究・学習時間の違いはほとんど見られず、逆に内部進学生の方が学会での発表や学術誌への投稿を経験する割合が大きいという結果も得られた。

 こうした数字で表された結果とは別の自由記述を見ると、複数の移動経験者が研究室での内部進学生との公平な扱いや組織的な支援を求めている。

 米国では一般に学部からそのまま同じ大学の大学院に進学する例は少ないといわれる。中央教育審議会は2005年9月の答申「新時代の大学院教育-国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて-」で、「高度な研究水準にある大学院などで、異なる研究経歴の教員から多様な視点に基づく教育・研究指導を受けたり、異なる学修歴を持つ学生の中で互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら自らの能力を磨いていく教育研究環境に豊富に接していくことが重要」と、学生の流動性拡大の必要をうたっている。

 結局、調査結果は東京大学を頂点とする大学の序列化がはっきりしている日本の場合、序列がより上の大学への「片方向の移動」となりがちで、各地に多くの有力大学がひしめく米国のようには学生の多様な流動化が進んでいない現実があることも明らかにしている。

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