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日本原子力機構 退職者の再就職あっせん禁止に

2010.01.21

 日本原子力研究開発機構は20日、役職員が他の役職員や元・役職員の再就職をあっせんすることと、役職員の地位を利用した不当な求職活動を行うことを禁止する規定を制定した、と発表した。

 同機構は昨年12月上旬、機構の関連施設の保守・点検などを請け負う企業グループが勤務実態のない機構OBに対し報酬や給与を支払い、国税当局から所得隠しと指摘され、約1億円を追徴課税されていた、と報じられた。新たな規定の制定は、これに対する機構の調査結果と併せて公表された。

 日本原子力研究開発機構の発表によると、常陽産業、原子力技術、ナスカ、TASの4社は、顧問だった原子力機構退職者1人に対し2005-07年度に合計720万円(240万円×3年間)の給与を支払い、国税当局の指摘に応じ修正申告した。この顧問は、「月4-5日の頻度で勤務し、核燃料サイクル全般にかかわる原子力技術などに関して助言・指導を行っていたが、勤務実績は役職員の記憶により把握していたことを確認したものの、勤務条件を明示する書面は作成してなく、また出勤簿などの雇用管理に関する諸手続きに不備があった」としている。

 さらに原子力技術株式会社は、顧問だったもう1人の退職者に対し2001-04年度間、合計960万円(240万円×4年間)を支払い、国税当局に対し修正申告した。この顧問も週1日の頻度で勤務し、再処理技術を中心とする原子力技術に関して助言・指導及び情報の整理などを行っていた。勤務実績については同様に「当該法人の役職員の記憶により把握していたことを確認したが、勤務条件を明示する書面は作成してなく、また出勤簿などの雇用管理に関する諸手続きに不備があった」という。

 同機構の調査結果を受けて文部科学省は同日、調査の対象となった企業・公益法人がいずれも機構と取引があることを重視、「条件が不明確な報酬が顧問などの名の下に再就職者に支払われていることは誤解を生じかねず、改めるべきだ」と改善策を機構に求めた。

 さらに随意契約が多いことに対しても「核不拡散、核物質防護、原子力災害の防止の観点から真に必要なものを除き、競争性のある契約とする」ことを要請した。

 同機構は、今回問題にされた社だけでなく、機構の退職者が在籍している法人さらに独立行政法人会計基準に基づいて「関連公益法人等」とされている法人などもあわせ合計36法人に対する調査結果も公表した。それによると昨年4月1日現在、同機構退職者は34法人に計267人おり、このうち嘱託や顧問などとして再就職している退職者は7法人に26人いた。26人すべてが文書による委嘱手続きは行われていたものの、勤務条件について委嘱状に明記されていない事例が4件、また、出勤簿などによる明確な勤務状況の管理が行われていない例が3件あることが判明した。

 またこれら36法人との間で2008年に交わされた契約総数1,465件のうち、競争性のない随意契約は577件。金額で見ると契約総額326億円中、随意契約は170億円を占める。このうち今回、問題にされた常陽産業、原子力技術、ナスカ、TASの4社の契約総数は174件、金額にして102億円で、そのうち随意契約は、94件、64億円とされている。

 随意契約が多い理由について同機構は、「常陽産業などは、機構との契約業務を通じ、原子力機構の施設の運転管理に必要な技術力を有した要員を育成し、法人としての技術力を高めてきた」「再処理施設、プルトニウム燃料製造施設などは、従来、国内唯一の原子力研究開発施設であり、大量の核物質を扱う施設であることから、核物質防護や核不拡散の観点、原子力施設の災害防止の観点からも受注可能な業者が限定される」ことなどを挙げている。

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