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アジア研究圏の創設提言 スマート・ソサエティ目指し

2010.01.01

 グローバル化によるひずみを改善し、アジア諸国が連携して新たな社会像の構築を目指す「アジア研究圏」の創設を、公益法人、大学などの専門家、研究者からなる研究会が提言した。

 武田計測先端知財団「科学技術の国際連携戦略研究会」(座長・有本建男・科学技術振興機構 社会技術研究開発センター長)がまとめた政策提言「アジア研究圏の創設」によると、アジア研究圏は「研究者、情報、資金の自由な移動と、地域全体としての人材育成により、地域が抱えるさまざまな技術的・社会的課題の解決に向けた体制を構築する」ことを目的とする。このような「アジア共同体」の目指す姿としては、地球環境にやさしく、生活を豊かにする仕組みを持つ「スマート・ソサエティ」という新しい社会像を提言している。

 「アジア研究圏」が進めるアジア域内の連携は「科学技術政策とODA(政府開発援助)・外交政策の連携を土台に、国境を越えた研究者・政府・民間非営利セクター・企業が参加する重層的なネットワーク」を重視する。これによって共同研究の成果から新しい技術や制度を生み出す。

 さらに、欧米に向かっている人材流出の流れを止め、アジアが持続的に成長できるよう人材の育成とネットワーク化を共同で行う仕組みを構築する。豊かな社会は何かを再定義し、今までのような量的な豊かさの追求ではなく、地球環境に負荷をかけず、格差拡大を助長せず、質的な豊かさを追求する社会をつくりあげる、としている。

 こうした「アジア研究圏」創設にあたっては日本が率先してイニシアチブを取ることを求めており、アジアからの有能な人材を積極的に受け入れ、定着させるための外国人受け入れ政策の転換を急ぎ、高等教育制度に加え、専門的知識を持つ外国人が働ける体系的な制度の確立や、民間企業での税制優遇や職能資格共通化に向けた取り組みを行うことを提言している。

 欧州連合(EU)は既に研究者・知識・技術の移動を自由にするため、欧州研究圏(ERA)構築を進めているという。

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