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脱毛遺伝子マウスの実験で発見

2009.05.26

 脱毛の原因遺伝子を国立遺伝学研究所と慶應義塾大学の研究チームが発見した。

 相賀裕美子・国立遺伝学研究所教授と岡野栄之・慶應義塾大学医学部教授らが見つけた遺伝子は、Sox21と呼ばれる転写因子で、これまで神経細胞の増殖や分化にかかわっていることが分かっていた。相賀教授らがこの転写因子を働かなくさせたノックアウトマウスで調べたところ、生後15 日目ごろから頭の毛が抜けはじめ、約1週間後には全身の毛が抜けてしまった。

 毛の一番外側にある層(キューティクル層)を構成する重要なタンパクをつくる遺伝子の働きを、Sox21が調整する役割を担っていることが分かった。顕微鏡で観察したところ、Sox21がなくなったためにタンパクの量が著しく減ってしまった結果、毛を毛根につなぎ止めるのに必要なちょうつがいのような構造がなくなっていることが脱毛の理由であることも明らかになった。

 ヒトの毛根を調べたところ、マウス同様、Sox21 がキューティクル層で働いていることが分かり、ヒトの場合もSox21あるいはSox21によってつくられるタンパクの異常が脱毛の原因になっている可能性がある、と相賀教授らは言っている。

 脱毛には、免疫機能の働きで起きる円形脱毛症、男性ホルモンの働きで男性に頻繁に見られる脱毛症のほかに、今回の研究対象になった遺伝性の脱毛がある。男女を問わずみられるこの遺伝性の脱毛については、これまで原因が分かっていなかった。

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