生息環境が脅かされているインドネシア・スマトラ島のオランウータンとテナガザルは違法な取引でさらに危うい状況にある、と警告する報告書を世界自然保護基金(WWF)と国際自然保護連合(IUCN)が発表した。
野生生物の国際取引を監視するWWFとIUCNの共同プログラム「トラフィック・ネットワーク」の報告書「インドネシアのスマトラ島におけるテナガザルとスマトラオランウータンの取引状況」によると、ペットとして飼い続けるのが難しくなったオランウータンが、リハビリセンターに持ち込まれたり、放棄されたりする例が増えている。
オランウータンについて、インドネシアの法律は許可なく飼育したり、所有することを禁じており、違反者には最高1億インドネシアルピア(約100万円)、最高5年の懲役刑が科される。しかし、違法取引自体を取り締まる法律や、所有者を実際に処罰する体制が整っていないことから、オランウータンをペットとして飼育しているような違法行為者が実際に処罰される例は少ない、と報告書は指摘している。
スマトラオランウータンは現在、約7,300頭くらいしか生息していないと見られている一方、リハビリセンターに持ち込まれたり、放棄されたオランウータンの数はこの30年間で約2,000頭に上るという。
オラウータンやテナガザルを絶滅の危機から救うには、法律の厳しい執行が必要と「トラフィック・ネットワーク」の担当者たちは訴えている。
オランウータンは、ボルネオ島とスマトラ島だけに住むが、生息域は海抜300メートル以下の低地熱帯雨林に限られており、この森の存続自体が危ぶまれている。リハビリセンターは、保護されたオランウータンを野生に戻すための施設だが、母親から引き離された子どものオランウータンをこれらの施設に保護しても、野生復帰どころか生存自体が困難と指摘する研究者もいる。