可視光でも効率よく働くと期待される新しい光触媒の開発に成功した、と新エネルギー・産業技術総合開発機構が発表した。
新しい光触媒は、酸化タングステンに銅イオンを添加してつくられた。これまで可視光でも機能を発揮する光触媒としては、酸化チタンの結晶格子の中に少量の窒素イオンを添加したものが有望視されているが、新しく開発された光触媒は、これに比べ10倍も性能が高い。酸化タングステンから銅イオンへ電子が移動し、銅イオンが電子を貯蔵して効率的な還元反応を行うためと考えられている。
他方、開発された光触媒は、洗剤などアルカリに対する耐久性やコストに課題があることから、新エネルギー・産業技術総合開発機構は、今後さらに検討するとともに、最終的には、より安くて安定な物質である酸化チタンを原料とした可視光型光触媒の開発を目指すとしている。
光触媒は、藤嶋昭・東京大学特別栄誉教授が大学院生時代に、酸化チタンに光を与えると水を水素と酸素に分解する能力を持つことを発見したのに端を発する。この強力な酸化能力や超親水性による殺菌効果や洗浄効果を利用してさまざまな応用が広がっている。ただ、太陽光に十分含まれている紫外線には強く反応するものの、紫外線に比べエネルギーの小さな可視光だけでは働かないという弱点も持つ。室内での空気浄化や抗菌、抗ウイルスなど応用範囲を広げるために、可視光でも機能を発揮する光触媒の開発が期待されていた。
今回の成果は、産学官が連携して材料開発から製品開発まで一体となって推進し、事業化を目指す新エネルギー・産業技術総合開発機構のプロジェクト(プロジェクトリーダー・橋本和仁・東京大学先端科学技術研究センター教授)で得られた。同プロジェクトは、2007年7月から12年3月の期間に51億円の予算が投じられる。
昭和電工グループの昭和タイタニウム株式会社(富山県)は、今回の成果を受けて、パイロット生産設備を設置し、酸化タングステン光触媒の量産化を行うと発表した。