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細胞増殖は寄生体が支配

2009.01.08

 
植物などの細胞に含まれるミトコンドリアと葉緑体が、細胞核の分裂を支配する役割を担っていることを、千葉大学などの研究チームが突き止めた。これまでの考え方を覆す発見として注目される。

 
植物を構成する細胞は真核細胞と呼ばれる。ミトコンドリアは元々、好気性バクテリアで、葉緑体は光合成バクテリアだったのが、10億年以上前に真核細胞の中に入り込み、共生するようになったと考えられている。ミトコンドリア、葉緑体とも祖先と思われるバクテリアに比べるとゲノム中に含まれる遺伝子が極端に少なく、長い間の進化の過程で多くの遺伝子を細胞核のゲノムに奪われたためと考えられている。これが、真核細胞にあっては、ミトコンドリア、葉緑体とも寄生体として細胞核のゲノムに支配される関係にあると見られる大きな理由となっていた。

 
千葉大学大学院園芸学研究科の田中 寛 教授と小林 勇気・東京大学博士研究員、兼崎友 ・東京大学研究員らの研究グループは、田中 歩・北海道大学教授、黒岩常祥・立教大学教授らと協力し、最も原始的な真核細胞からなる藻類「シゾン」を研究材料に選び、細胞核とミトコンドリア、葉緑体の増殖がどのように関係しているかを調べた。

 
この結果、まずミトコンドリアと葉緑体がゲノムを複製し、この際、合成されるテトラピロール合成中間体が伝達役となり、細胞核のゲノム複製が引き起こされることを突き止めた。研究チームは、寄生体(パラサイト)が宿主の増殖を支配するという意味で、テトラピロール合成中間体の役割を「パラサイト・シグナル」と名付けた。

 
真核細胞は、植物以外の動物や菌類の体も構成している。ヒトの細胞は、ミトコンドリアだけで葉緑体は持っていない。しかし、葉緑体を持たない真核細胞においても、共生に由来するミトコンドリアからのシグナル伝達系が細胞増殖を制御することがあれば、今回の研究成果は医学生物学分野においても今後重要な意味を持つ可能性がある、と研究者たちは言っている。

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