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生きた細胞も観察できる電子顕微鏡開発

2008.12.10

 乾燥した試料しか観察できない電子顕微鏡の限界を超えた電子・光学合体型顕微鏡を産業技術総合研究所の研究チームが開発した。基礎生物学の分野だけでなく、将来は創薬や湿った試料を扱う医療現場などでも活用が期待されている。

 脳神経情報研究部門の佐藤主税・構造生理研究グループ長、小椋俊彦・主任研究員が、日本電子株式会社の須賀三雄・クレアプロジェクトリーダー、西山英利・副主任研究員、山形県工業技術センターの渡部善幸・電子情報技術部員と協力して開発した顕微鏡は、走査電子顕微鏡を逆さまにし、上に光学顕微鏡を載せた形をしている。両顕微鏡の間に置かれた特殊な皿「薄膜ディッシュ」が、技術的ポイントだ。

 薄膜ディッシュの底部には、電子線を透過し、さらに1気圧の圧力差にも耐える窒化シリコン(SiN)の薄膜窓がついている。これにより真空中でしか試料を観察できない電子顕微鏡の弱点を克服、湿った試料あるいは溶液中の試料をこの薄膜窓を通して観察することを可能にした。観察する前に試料をあらかじめ1-数日以上かけて脱水・乾燥する事前の処理も必要なくなり、観察効率も大幅に高まる。上部は開放されていることから試料を完全な大気中に保持することができ、試料に試薬を加えて変化を観察することも容易になった。同じ試料を上部の光学顕微鏡と交互に観察することができる。

 研究チームは、この顕微鏡の試作機を用い、細胞内小胞体や細胞が外来の異物を飲み込む瞬間などを詳しく観察することに成功している。

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